財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
「そうね、ふふ」
「そうだよ。采羽、今日の夕餉は何?」
「今日は、和美さんがメイン担当だから……肉じゃがだと思うよ。私は、味噌汁担当」
私、黒瀬采羽はこの兄の妹で三人いるうちの末っ子だ。
「へぇ〜和美さんか。楽しみだな」
和美さんというのはうちに通いで働いてくれている家政婦さんで、私が小さな頃からいてくれている私たちきょうだいにとって優しいお姉さんのような存在だ。
黒瀬家の夕餉は、十七時半から始まる。一緒に食べるのは、私に優羽斗兄さまにお母様と優羽斗兄さまのお弟子さんだ。
いつもは、父と一番上の兄である榛名兄さまも一緒だが今日は本家にいるため今日は空席だ。
私は家政婦さんと共に作ったものを配膳してお盆を台所へ戻る。