財閥御曹司とお見合い偽装結婚。



「遠いところ来てくださり、感謝します。私は、宝船(ほうせん)翠翔(すいと)と申します。旧宝船財閥が経営するホテルグループで専務をしております」


 宝船さんっていうんだ……名前も翠翔って綺麗な響き。


「……采羽、挨拶しなさい」

「す、すいません。初めまして私は黒瀬采羽と申します。本日はありがとうございます」


 動揺して改めて見る彼がかっこよくてじっと見つめてしまった……これじゃあ呆れられちゃいそうだよ。どうしよう。


「こちらこそ、ありがとう。立ち話もなんですから座りましょう。それに、ここは一番景色が綺麗な部屋なんです。緑がよく生えて、川が綺麗なんだ」

「素敵ですね、川の音もして異世界のようです」

「そうでしょう? 私も気に入ってるんですよ。……あ、そろそろ料理が来る頃だから座りましょう」


 そう言われて私たちは席に着くと、タイミングよくお料理が運ばれてきた。




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