財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
「ありがとうございます、采羽さま」
「いいえ。今日もありがとう……頂くわね」
私は家政婦さんたちに一声かけて居間に行くと、もう優羽斗兄さまが今か今かと待っていた。
「やっときた! お腹すいたから早く食べたい!」
「もう……お兄様は、お茶席以外はお子ちゃまね」
「そんなことない、腹が減っては戦はできぬって言うだろ」
「戦しないけど」
「たとえばの話だよ。みんな席に着いたことだし、食べましょうかね……では、いただきます」
お兄様の号令で手を合わせれば、みんな一斉に「いただきます」と言って食べ始めた。