財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
新婚生活
黒瀬家を出て宝船さん――もとい翠翔さんのレジデンスに引っ越してきたのはいろんな名義変更が終わり無事転入届を提出し終わった先週のこと。
「采羽ちゃん、会見は和装がいいと思うよ。俺、これ似合うんじゃないかって思う」
「え、派手じゃないですか?」
「そんなことないよ。采羽ちゃんは肌が白いしなんでも似合うけど、いつもは着ない色もいいんじゃないかな。特別だし」
確かにそうなんだけど……翠翔さんが見ているのは色掛けのカタログ。これは結婚式とかではなく別の宝船家として結婚発表するための衣装選び。旧財閥家だけあって、メディアに出て会見をするのだとか。
あまり表には出たくなかったけど、もう宝船家に入り翠翔さんの妻となったのだから義務は果たさないといけない。
「そうですね、一度、試着しに行っても良いでしょうか」
「全然それはいいよ。あ、そうだ家に呼ぼうか……そうと決まれば連絡しないとだな」
「えっ、家に呼ぶ? どういうことですか?」
「そのままの意味だよ」
もう翠翔さんは電話を掛けていたらしく、今日今から来てくださることになってしまった。