財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
ずっと好きだった
衝撃の再会をして私たちは、家に上がってもらった。上がってもらったとはいえ、ゲストルームのような場所でリビングのような広さのある殺風景な部屋だ。
一旦四人で座ったが、まるでお通やのように静かでドンヨリしている。
それは当然だ。兄の奥さんが私の旦那様に抱きついて馴れ馴れしく「翠くん」と呼んだのだから。まるで恋人達の感動の再会と言うように……だがそれは一瞬で翠翔さんは理緒ちゃんを離そうとしたけど離れなかったためそれを引き離したのは榛名兄様だった。
さっきまで楽しかったのに今は地獄にいるように怖い。二人はどんな関係なのか、どうして翠翔さんを馴れ馴れしく呼んで抱きしめたのか、二人の関係を兄様は知っているのか。わけがわからない。もしかしたら、偽装結婚はこれが理由なんじゃないかと思ってしまう。
「……俺は、全て理緒とお祖母様に聞いたよ。おかしいと思っていたんだよ俺の結婚と采羽の結婚がまるで急ぐように決まり婚姻届を提出したこと……本来なら、采羽より先に優羽斗に縁談が来るはずだから。それに宝船家とはほとんど関わりがなかった」
「え、でもお祖母様も翠翔さんもある事業を共にするから必要だって聞きました」
「それは作られた嘘だ。こいつらは、付き合っていた。采羽と見合いしてからはあっていなかったみたいだが、お祖母様に別れさせら――」
兄様の言葉を遮り「それは違います」と翠翔さんがはっきりと兄と私に告げた。すると理緒ちゃんは「ま、間違ってないでしょ!?」と叫んだ。