凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
美樹のことばにフッと自嘲気味に笑った。
『医師としてのキャリアが順調なこと、茉由里との関係もうまくいっていた。医師として立派な男になって、茉由里を守っていければいいとそう思っていたんだ』
昨日まであったはずの、続いて行くはずだった茉由里との蜜月……。
美樹がいたわしそうに眉を寄せた。俺は懺悔するように続ける。
『忖度されたくない、という理由で研修先を上宮の影響力が少ない病院を選んだことも、上宮病院内で北園会の息がかかった人間が増えていたことに気がついていなかった要因だ』
『その通りね。でもあなたひとりのせいにするつもりはないよ。今まであなたに全て押し付けて好き勝手してきたあたしだって……』
美樹ははあ、と大きく嘆息しながは髪をかきあげた。
『結局、あたしたち子どもだったんだよね』
『……そうだな』
一人前になったつもりだった。だから茉由里に求婚した。けれど現実はどうだ?
愛する女ひとり守れず、無力感に打ちひしがれる。
茉由里に会いたい。けれど、やはりいま茉由里を呼び戻すのは、彼女にとっていいことだとは思えなかった。『事故』の二文字が恐ろしくてたまらない。
強くならなくては。誰よりも、強く。
愛おしい人たちを守れるくらいに。
『……万が一のことを考えれば、茉由里と少し離れていたほうが危害を与えられる可能性は低い。俺を種馬にしたい以上、そのくらいの約束は守るはずだ』
そうね、と美樹は頷く。
『できることはなんでもしましょう』
何重にも対策を練って、すぐにでも迎えに行きたいのをぐっと耐えた。茉由里の叔父と秘密裏に連絡をとり、彼女の周りにはさりげなく警護員を配置した。カフェの常連客として、祐希が生まれて以降は保育士としても。
何度も連絡をしようと思った。会いたくて苦しくて気がつけば東京駅のホームにいたこともある。けれどまだ早い。守ると誓ったのだ。何がなんでも守ると。
目の前で白い車体のドアが閉まる。