凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
四章(side宏輝)
【四章】side宏輝
茉由里から『北園さんから電話があったの』と申し訳なさそうな顔をされた瞬間、自分自身への怒りで頭が沸騰するかと思った。なにが『君は俺に守られていろ』だ。接触させているじゃないか……!
「どういうつもりだ」
訪れた北園会の本院で、白衣姿の北園華月は表情を変えない。ただ肩を軽くすくめるような動きをしただけだった。
「バカにしているのか?」
「まさか。ただ理解できないだけ。どうしてお互いにこだわるの?」
呆れて言葉も出ない。
「茉由里が俺の運命だから」
「運命」
北園華月は目を丸くして、身体を丸め笑い出す。
「運命! そんなものないわ」
「そうだな。あなたにはなさそうだ」
俺の答えに北園は本当に楽しげに笑った。
「だってあたしだって、かつて運命を信じたことがあったのだもの」
茉由里に接触すれば、北園会の汚職を公表する。その契約通りに公表された政治資金規正法違反で飛んだのは北園華月の首ではなかった。それでもいい、内部から北園の行動に監視とストップがかかれば。
いずれは北園本人にも去ってもらうつもりだし、そのための行動はとっている。
茉由里と再び婚約した俺は、入籍はもう少し待ちたいという彼女の希望を呑むことにした。再び心を開いてくれただけで幸福なのだ、焦ることはない。
『あなたが祐希を愛してくれているのはわかってる。でも離れて見守るのと、実際に一緒に暮らすのは全然違ったでしょう? あなたと祐希が一緒にいることが本当にふたりにとって幸せなことなのか、もう少し見守らせてほしいの』
全くの正論で、言い返す言葉が何もなかった。結局のところ、千の言葉を尽くすよりもひとつの行動なのだ。少なくとも育児においては。
そんなわけで、まずは茉由里と祐希との家族旅行を成功させなければならない。