凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
力を抜いてただ俺に身を任せ始めた茉由里のうなじにキスを落とす。ソファ前のローテーブルに置いておいたカバンを引き寄せると、茉由里は不思議そうに俺を見た。そこからベルベットのアクセサリーケースを取り出すと、茉由里が目を瞬く。
「似合うと思って」
俺はケースから華奢なバロックパールが連なったネックレスを取り出す。驚いている茉由里の首につけてやると、小さく彼女の口が開く。
そこに指を押し付けて「遠慮の言葉ならいらない」と念押しすれば、茉由里は眉を下げたまま、ただ花開くように笑う。
「ありがとう」
「ん」
ヴィンテージデザインのパールネックレスは、今日の茉由里の装いによく似合う。鮮やかな海のようなワンピースに煌めくパール。海に揺蕩う泡のようにも見える。
「素敵。海の泡みたいで」
そっと指先で触れた茉由里が、俺と同じ感想を漏らす。微笑んで抱きしめ直し、頬にキスをした。
海の泡、からふと人魚姫を連想する。茉由里が泡になってしまったら俺も死ぬだろうな。まああの馬鹿王子と違って、俺はすぐに彼女が自分の運命だと気がつくだろう。
実際に気がついた。
最初に会った瞬間から、茉由里が俺の唯一だとちゃんと見抜いていたんだ。子どもにだって運命くらいすぐわかる。
「愛してる」
鼻先でうなじから首筋をくすぐる。あえかな声で笑う茉由里が身を捩り、首筋を舐め上げればすぐに力が抜ける。
うなじを指で撫でてから、ワンピースのファスナーをゆっくりと下ろしていく。インナーも脱がせ、俺の膝の上にいる茉由里が身にまとうのはレースたっぷりのホワイトパールの下着と、パロックパールのネックレスだけ。
真っ白な彼女の肌に、長い髪がひとふさかかる。羞恥で、あるいは官能で、白い肌がうっすらと朱色をはく。あどけなささえ覚える唇だけが鮮やかに赤い。
鎖骨を軽く噛む。茉由里が浅く息を吐いた。
柔肌にキスを繰り返し、跡をつけては熱く息を吐く。細い腰を撫で背骨をひとつひとつ数えるように撫で上げ、ブラジャーのホックを外す。恥ずかしそうに茉由里は俺の肩に手を置き、長いまつ毛を伏せて目を逸らす。
指で、舌で、茉由里の身体をほぐしていく。
「大好き」
そう言って浮かぶ微笑みに、心臓が割れたかなようなときめきを覚える。俺は遠慮なく彼女をかき抱きながら、熱い泥濘に屹立を埋め、低い声で愛おしい人の名前を呼んだ。
差し込む朝日で目が覚めた。時計を見ると午前七時過ぎ、予定より少しばかり寝過ごしてしまっていた。
ごろんと横になり、眠る茉由里と祐希の寝顔を見つめる。祐希は信じられないほど俺にそっくりだけれど、寝顔は不思議なことに茉由里そっくりだ。
レースカーテン越しの白く清らかな日の光に照らされるふたりをしばらく見つめる。永遠にだって見つめていられるけれど、残念ながら予定の時刻が迫っていた。俺としては寝かせていてもいいのだけれど、きっと茉由里にあとで怒られるだろうから。
「起きろー、ふたりとも! 船に乗るぞ!」
寝ぼけ眼で目を覚ますふたりの表情も、たまらずまとめて抱きしめてしまうほどにそっくりだった。
朝食はフレッシュフルーツや野菜たっぷりのビュッフェスタイルを選んでいた。旅行という感じがするし、茉由里が好きなのだ。
席はオープンテラスで、海と南国風の庭が眺められる。隣の席との間隔も広々としていて、のんびりした雰囲気が漂っていた。
祐希用の乳幼児用シリアルは頼んであったため、アップルジュースと一緒にウェイターがテーブルにサーブする。
「茉由里はどうする? 先にとってくるか?」
「祐希がシリアルを食べられるか心配だから、私あとででもいい?」
「もちろん」
そのほうがゆっくり選べるだろう、と特にこだわりのない俺はベーグルサンドふたつとコーヒーを取って戻る。祐希にシリアルを食べさせていた茉由里が目を丸くした。
「宏輝さん! こんなに色々あるのにそれだけでいいの? 気を使ってない? ゆっくり選んでいいんだよ」
「外食だと、いつもこんなだろ、俺」
「そうだけど……私の作るご飯は時間かけるくせに」
「茉由里の手作りはゆっくり味わうに決まってるだろ」
俺はベーグルサンドをもぐもぐと食みながら茉由里からスプーンを受け取る。
「ほら、行っておいで。ギュウシンリとタマリロとフィジョアが置いてあったぞ」
「どれもわかんないよ!」
茉由里が皿を手に歩いていくのを見つつ、祐希の口にシリアルを運ぶ。パクッと食いつくところから見れば、幸いなことに気に入ってくれているらしい。
「えらいぞ、なんでもよく食うなお前」