凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】
五章(side茉由里)
【五章】side茉由里
宏輝さんは『守られていろ』と言ってくれたし実際守られていると思う。
「行ってきます、茉由里。何かあればすぐ連絡しろよ。俺が直接動けなくとも君を守る手段は何重にも張ってあるから」
「わかった」
玄関先で宏輝さんを見送りながら、にっこりと微笑む。朝六時、祐希はまだすやすやと眠っていた。
いつもならすぐに玄関を出るのに、宏輝さんは少し逡巡するような様子を見せる。
「宏輝さん?」
「悪い……少しだけ」
そう言って私をぎゅっと抱きしめ、耳の辺りを鼻でくすぐる。くすぐったくて身を捩った私を更に強く抱きしめ、彼は「充電」と呟く。
「茉由里成分を補充していく」
「ふふ、どうしたの?」
広い背中を優しくたたくと、宏輝さんはようやく身体を起こして私の頬を親指の腹で撫でる。
「今日、疲れる予定があるんだ。さすがに少々気が重い」
「そうなんだ」
大きな手術かなにかだろうか。私は宏輝さんの背中を撫でながら続ける。
「うまくいくよ。あなたはすごいもの」
「……ありがとう。君がいれば俺はいくらでも強くなれる。誰よりも愛してる、茉由里」
宏輝さんは私の頭にキスを落とす。それからこめかみを唇で撫で、頬にキスしたあとに耳殻を甘く噛んできた。
「もう」
「あのな、ここ」
宏輝さんは私の耳の縁を撫でながら続けた。
「耳の外側。ここに小さな突起があるの、気がついていたか?」
「え?」
私は不思議に思いながら自分の耳を触る。触るけれどよくわからない。
首を傾げると、宏輝さんは優しい目で言う。
「四人にひとりくらいの割合で出現する、人間の進化の名残りだ。祐希にもある」
「祐希にも?」
「そっくりなんだ、君たちは。愛おしくて愛くるしくて仕方ない」
彼はそう言ってまた耳の縁を撫でた。……そのあたりにあるのかな? あとで鏡を見てみよう。そんなところ、意識してみたことなかったな。
「ありがとう、茉由里。少し元気になった」
「ほんとう? 良かった」
「ん」
宏輝さんは私を引き寄せ、唇を重ねる。
お見送りのときは触れるだけのキスなのに、今日は違った。ぬるりと入ってきた舌が私のものと擦り合わされる。絡めて噛まれて、呼吸もできずに彼にしがみつくと、彼はようやく満足そうに息を吐きながら唇を離してくれた。