フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
柊と違って、ぐいぐい来るな、この人。


優しく言って、強引な人だ…。


「あ、そういえば、櫂くん好きな人とは今どんな感じなの?」


そんなことを思っていたのが悪かったのか、突然凛先輩に“好きな人”を尋ねられた。


パソコンのキーを打っていた俺の手がピタッと止まる。


「……どうなんでしょうね」


「え、もしかして上手くいってない?」


「心配するほどではないので。ちょっと手強いだけです」


「ったく、櫂くんは恋愛ヘタレだな!」


こらこらと言って凛先輩は俺の背中を軽く叩く。


凛先輩、力加減してるつもりなんだろうけど、地味に痛い…。


凛先輩に叩かれた背中はジミジミと痛みが広がったような気がした。


「はは…そう言われましてもね…」


だいたい学年違って、接点持つことがやっとなのに、これ以上どんなアピールすれば、彩ちゃんは振り向くんだっての。


「あ!じゃあさ、今日お泊まり会しようよ!」


「……はい?」


お泊まり会……?


「櫂くんの恋愛相談会しよ!」


いや…そこまでしなくても…。


話聞いてもらえれば十分なんだけど…。


「よーし、そうと決まれば、梓とお母さんに連絡しようっと!あ、そっちも連絡するんだよ!」


え、今の決定事項?


「あのー…マジで言ってるんですか?凛先輩、一応受験生でしょう?」


「息抜き大事だよ…!今日はあたし櫂くんの恋愛相談聞くから勉強なしにする!!」


ふんっと得意げにドヤ顔で言う凛先輩。


ほんと、この人のノリついていけねぇ…。


日暮家の突然変異種だ…。


そして俺は日暮家で半ば強引にお泊まり会をすることになった。
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