フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
結局、夏休み中の学校では彩ちゃんに会えず、午前中で生徒会の作業を終わらせた俺は、


1度家に帰り、お泊まり会に必要な荷物をまとめ、日暮家に向かった。


午後2時。


「おー!久しぶり!櫂くん!」


「梓くん、久しぶり」


日暮 梓(ひぐれ あずさ)くん。日暮家の長男で現在就活中の大学4年生。


「凛から連絡貰ったよ。恋愛相談だって〜?完璧櫂くんもそういうのあるんだねぇ〜」


「よく言うよ。好きな子にアタックするのに、ずーっと悩んでやっと連絡先ゲット出来たくせに」


「ゔ。」


家に行くたび、長女の凛さんと長男の梓くんの会話。


妹に生意気口叩かれる兄って、何……。


押し負けてるじゃん…。


「って、あ!昼食出来てるからさ、食べながら話そうよ!」


そして、早速始まろうとする恋愛相談会。


俺、無事に帰ってこれるのか……?



日暮家で昼食を食べた後、食後のスイーツとして食べる色とりどりのケーキを並べながら、恋愛相談会が始まった。


「おーマジか!?櫂くん、青春してんじゃん〜!」


今日俺の好きな人を知った梓くんに髪をくしゃくしゃ乱される。


梓くんは俺が彩ちゃんという子が好きなことを知らないでいたから、とりあえず基本情報を含めた今までの経緯を説明した。


「てか難航してるね。その小桜さんって子」


「まぁ聞くからに櫂くんの気持ち全然気づいてないよね」


気づいていない…一理あるけど、ほとんど原因は俺だ。


告白を断ったことで、“先輩後輩止まり”。


こんなの辛すぎるだろ……


今思えばちゃんと応えてあげたかったな、と思ってたりもする。


けど俺は……弱虫だから、応えることが出来なかった。
< 29 / 56 >

この作品をシェア

pagetop