フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
「んーじゃあさ、その気にさせるってのは…?」


「?その気にさせるって……?」


「櫂くんが今まで小桜さんにやってたこと、確かにいい線行ってるんだけど、後一押しってところなんだよね。


なんか、あたしだと好きなのかな?どうなのかな?って思っちゃうよ。小桜さんなんてましてや距離近な先輩しか思ってなかったり」


ゔ。なんか、言われてみれば、そう思えてきたかも…。


彩ちゃん、すごく鈍感な子だから…。


「噂流したりしてさー」


「もしかしたら自分のこと好きかもって思わせるってことですか?」


「そういうこと」


そう思っていた時、今まで口を出さなかった梓くんは曖昧なのが嫌なのか、“告白”を押してきた。


「そんな曖昧なもんじゃなくてさ、もういっそのこと告白しろよ!告白!」


「…いや……俺、…告白断っちゃったんですよね」


「「えっ?」」


梓くんと凛さんは2人してポカンと口を開き、目も見開きながら驚いていた。


「クラスの一軍女子から守るためとか言い訳してな、こいつ」


そんな沈黙を破ったのが、ただずっと話を聞いていただけの柊だった。


「おい、柊!」


一言余計なことを…!


「櫂くんバカなの!?」


「櫂…俺お前のこと賢い子だと思っていたが…まさか恋愛ヘタレだったなんて…」


「梓くん、その言い方やめてください。もっとマシなやつにしてください」


「えーじゃあ恋愛下手?」


「あーもういいです。言った俺がバカでした」


凛さんも梓くんも俺のこと「恋愛ヘタレ」って言うけど、そんなに俺ヘタレなのか……?


「櫂くん、それじゃあ話にならなくない!?」


俺に呆れながらも必死に考えてくれている凛さん。


「いやけど分からなくもなくないか?小桜さんって子目つけられると思っての行動だろ?」


「だからって断るまでしなくてもいいじゃん…!!」


梓くんと凛さんは俺をそっちのけにし口争いを始めた。


そんな時、ケーキを黙々と食べていた柊が俺だけに聞こえる声で言ってきた。


「櫂にとって正しい行動だと思ってたとしてもあっちは違うんだからな」


「は……?」


「…頭使えってこと」


いつもより冷たい声で放った柊と話したのはこれきりで、俺の恋愛相談会を目的としたお泊まり会が終わり、


夏休み中は変わらず彩ちゃんに会えず、俺のつまんない夏休みは終わった。
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