フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
そして夏休みが終わり、9月。
2学期が始まって、1週間も経たない頃、俺は柊に言われたことに引っかかりながらも、
凛先輩からアドバイスされた“噂”を使って噂を流すことにした。
と言っても俺に“好きな人がいる”ことをクラスの奴らに知ってもらえればいいだけの話だけど。
そして早くも翌日に、朝の登校で悲鳴のような喚き叫ぶ声が耳に届いた。
「ねぇ!聞いた〜!?櫂って、好きな人いるって!」
「嘘!?それ誰から聞いたの!」
「クラスの男子から…!!」
「うそ〜〜!!じゃあガチでいるってこと!?」
「ショックなんだけど!」
女子はやはり噂話が好きだ。
昨日言ったばっかりなのに、もう2年の中で広まった。
噂されるのは嫌だけど、彩ちゃんに届いてほしいとも思っている自分がいた。
昼休み。
今日は珍しく告白の呼び出しはなく、教室にいるのも疲れるということで生徒会室で柊と過ごしていた。
「おい、噂流れてるけどいいのかよ」
「…これだって、勝算高めるひとつでしょ」
「……どうなっても知らないからな」
分かってるよ、彩ちゃんが俺の好意に気づいてない鈍感な子って。
この時、柊の言葉通りになってしまうなんて俺は知らなかった。
───彩ちゃん、どうか、“俺の好きな人”に気づいて。