フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
「は、え、ちょっと…!?」


紗奈ちゃんの手をとり、逃げるように私は人影の少ないところへ目掛けて走った。


「こら〜!1年逃げるな〜!!」


同じ人を好きになったっていいじゃんか。


だって、それくらいその人が魅力的で、素敵ってことでしょ?



渡り廊下。


「ぜーはーはー」


人気のない廊下で息を切らす。


「小桜さん、大丈夫!?」


「うんっ、私は平気。それより紗奈ちゃん平気!?あの先輩たちに何かされてない!?」


「……すき」


「へっ?」


「小桜…彩ちゃんで合ってるよね?」


「う、うん」


「彩ちゃんって呼んでもいいかな?」


「!もちろんだよっ」


「えへへ、ありがとう。やったぁ、初めての女友達だぁ」


初めて…?


「それってどういう…」


「実はね、さっきあの先輩たちに紗奈一発やられたんだよね♡」


「…えぇ!?じゃあ保健室行こうっ!」


「いいよいいよ。いつものことだもん」


「いつものこと…?」


「…………


紗奈って、可愛いんだよね」


「!うん、すごく可愛いと思うっ!」


「あははっ、今自慢して言ったつもりなのになー」


「いや自慢なんてそんな…!自信でしょ!すごいよ」


「そんな風に言ってくれるの彩ちゃんだけだよ。


あたしね、可愛いし、その上小柄でいーっつも男子にチヤホヤされてさ。


それで、いーっつも女子の妬みとか必然的にもらっちゃってー。


こっちは好きでこんなんじゃないのに」


「……」


「そんな時富谷先輩が救ってくれたんだよね。


あたしのこと“女の子”じゃなくて“一生徒”として見てくれたの」
< 34 / 56 >

この作品をシェア

pagetop