フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
誰かに名前を呼ばれ振り返ったら、そこには龍輝がいた。


「龍輝…?どうしたの?」


「……ちょっと俺についてきてくんない?」


「っえ?」


龍輝から何かを誘うことはよくある。


『パンケーキ食べたかったあぁ!』


『じゃ、補習帰りでも…』


『龍輝とは食べたくない』


『酷くね!?』


けど、いつもとは違うことを龍輝と目線が合わさった時はっきりとわかった。


「いいけど…」


「さんきゅ」


教室出てから話そと言われ、私は紗奈ちゃんに一言言い、龍輝の後を追うようについていく。



連れてこられたのは、中庭。


「彩、平気か?」


「え…?何が…」


「…先輩のこと」


「へ、平気だよ…!私そんなんで怯まないし…」


って、あ…れ…?


なんで今私涙出てるの…っ。


ニコッと笑って平気だよと見せたつもりの笑顔には、うっすら涙が流れていた。


「彩…」


「あああ、そうだ!これきっと砂埃が目に入って、流してるんだ…!!」


「彩、誤魔化さなくて、いいから」


ギュッと龍輝は私を抱きしめてきた。


「龍…輝…っ」


「俺ら何年一緒にいると思ってんだよ。嘘つくの下手すぎ」


「…っ、私のバカァ…っ、私先輩にずっと好きな人がいるって分かってたのに…っ」


ポタポタと溢れ出す涙。


涙は次第に龍輝のワイシャツに落ちて染みてゆく。


どうしよう…っ、涙が止まんないっ…


今更こんなことで龍輝に迷惑かけたくないっ…


無理やり自分の袖でゴシゴシと涙を拭う。


その時、抱きしめらていた腕が離され、龍輝の指先で上乗せするように拭ってきてくれた。


「りゅ、龍輝…っ」


「ねぇ、彩」


「?」


「彩を弄ぶ先輩なんてやめて俺にしない?」


「…っへ?」


「好きだよ。俺じゃ、彩の彼氏になれない?」
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