フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
本当は傷ついてる。富谷先輩とのデートで見せた明るい笑顔じゃないことをこの目で見てわかった。


恋愛っていうものは必ずしも幸せなことばかりではない。


こうやって、誰かを傷つけてしまうこともあるんだ。


けど、それでも、立ち直ることは出来る。


だって、みんな、恋をして強くなってるんだから。


「…っ、ありがとうございます…!行ってきます!」


柊先輩にお礼を言い、先輩を再び探し出す。


職員室って、ここから遠いんだよね…。


……走ろう!


意を決して、廊下を駆け走り、私は職員室の方へ真っ直ぐ向かった。そして、走って、走った先に。


先生とお話が終わった様子な富谷先輩が目に映った。


息を切らしながら、教室に戻ろうとしていた富谷先輩を引き止めるために精一杯の声を上げる。


「富谷先輩…!!!」


「!彩ちゃん…」


「ぜーはーぜー、あの、お話が…」


キーンコーンカーンコーン…


5限目が始まるチャイムが校内に鳴り響く。


うっそでしょ…!!?


朝といい、お昼休みといい、


今日タイミング悪すぎじゃない…!!?


「あら?富谷くんと小桜さん?チャイム鳴ったわよ?」


すると、職員室から出てきた田村先生がこちらに気づいてやってきた。


嘘嘘嘘、タイミング悪すぎるよー!


これじゃあ放課後話せなくなっちゃう…!


「あ、う、えっと…」


「もう授業始まるでしょ?教室戻りなさい」


うぅう、今すごい大事な話しようとしてるのに…!


「彩ちゃんーーー逃げるよ?」


コソッと耳打ちしてきた先輩。


「へっ!?」


「…いいってことにするからね。走るよ」


「走…!?えぇ!?ちょ、先輩…!?」


「!!?こら〜〜!!!ちゃんと教室戻りなさい〜〜!!!」


先輩は私の腕を優しく握ってきて、一緒に走った。


どこに向かってるのー!?


先生の声なんて先輩は聞こえないフリをしてて、ただ私の顔を見ながらいたずらっ子みたいな意地悪な顔をした。



先輩、今、何を考えていますか…?
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