フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
連れてこられたのは屋上の暖かな光が差した出入り口からちょっと離れた物陰で隠れる場所だった。


「いやぁ、走ったね」


ニコニコ面白がるように笑っている富谷先輩。


「な、何考えて…っ」


その一方で私は息を切らしていた。


先輩、走るの速すぎるっ…。


100m走何秒なんだろう……って、そうじゃなくて!


「話したいことがあるんでしょ、彩ちゃん」


「!」


「教えてほしいなって」


優しい眼差しで私を見つめてくる先輩。


…っ、先輩はズルい。


私のことなんて、何とも思っていないくせに、思わせるようなことばっかり。


「っていうのはほぼ口実で本心は俺が聞きたかっただけなんだけど」


ほらこうやってまた。


私、先輩に期待しか出来なくなっちゃう。


「…っ、何でっ…」


「?」


「何で、こんな、に。私のこと構うんですか。ただの先輩後輩の関係でしか思ってないくせに…っ」


先輩には“好きな人”がいるくせにっ…


私のこと、ただの後輩でしか思ってないくせに…っ


どうしてーーー


「どうして、気持ちを踏みにじることをするんですか」


龍輝と柊先輩の告白を断って分かった。


人の好意を断ってしまうことは、とてもつらいことなんだって。


応えられなくて、悲しかった。


だけどあの2人は私の恋が報われることを望んでいた。


『……じゃあ代わりに、ぜってー先輩のこと振り向かせろよ?』


『告白、頑張って。応援してるから』


あの2人の気持ちが少しでも報われるように、私は私の恋を叶えさせる。


「先輩は、私のこと、どう思ってるんですか」
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