フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
あの時聞けなかった気持ちを今、聞くんだ。


「……」


何か言いたげな顔をして、けど目が合った時、先輩は目つきを変えてこちらをじっと見てきた。


龍輝は「もう1回自分の目で確かめに行ってこい」って言ってたけど、振られるに決まってる。


どうしてあんなことを言ったのか分からない。けど背中を押してくれた。


だから、私は、怖くてももう1度真正面からぶつかるって決めたんだ。


「彩ちゃん」


名前を呼ばれ、ビクッと肩が震えた。


怖いっ……先輩の口から「ごめん」を聞くのが。


けど、逃げない。逃げたりしない。


目をぎゅっと瞑って、振られる覚悟を持った時だった。


「好きだよ」


「……へっ」


先輩の口から「好き」という言葉が聞こえた気がした。


今、なんて……?


す……き……?


「あの時の告白、本当はすごく嬉しかった。俺が弱虫だった。ごめん」


「う、嬉しかったんですか?振ったのに。タイプじゃないって」


しかもあんなバッサリと。


『あーごめん、タイプじゃないんだよね』


「ごめん、あれ勢い任せだったんだ」


「い、勢い?」


「……あの日、俺のクラスにいる一軍女子3人が告白現場見てて」


「そ、それはたまたま見ただけとかじゃ…」


「いや違う。俺が告白されるたびに見に来てた。俺に彼女がつくことが嫌な奴らだから。実際俺のせいでいじめられた奴もいるんだ」


「あの先輩たち、ひどい…!ガツンと言ってやんないと!」


「…あははっ、彩ちゃんってすごいね」


「え?」


すごい…?


「この前、確かえっと、橋本さん。橋本紗奈って子、助けたでしょ?」


「!?見てたんですか!?」


あんな修羅場を…!?


「いやたまたま柊と飲み物買いに行ってた時見かけちゃって。


その時、争ってるなってまた申し訳無くなったんだ。けど、俺助けに入れなくて。自分のことなのに」


「……」
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