フラれたはずなのに、なぜか迫ってくる
うっわぁ……空回りしてるよ!恥ずかしい!


空回りして恥ずかしくなった私に、ぎゅっと抱きしめてきてくれた先輩は、私と目線を合わせた。


「彩が初めてだよ。全部。こんなに俺を好きにさせて、初めてのこといっぱいで、あの時もキス初めてだったし…」


「そう、だったんですか…?」


「彩の前でこんな情けないこと言う俺ダッサ」


先輩…。


珍しく赤く顔を染めた先輩に、思わずキュンと胸が高鳴った。


「先輩、好きです」


「……え?」


「先輩、いっつも余裕そうで私ばっかり好きなのかなって思ってたから」


同じ気持ちだったなんて、すごく嬉しいっ…。


「そんなわけないじゃん。四六時中彩のことばっかりだよ?好きすぎて柊に引かれるくらいだし」


「あはははは…」


「俺けっこーダサいよ?そんな俺でもこれからも一緒にいてくれるの?」


「何当たり前のこと聞いてるんですか…!私先輩のこと大大大好きです…!


先輩がカッコ悪いと思うところさえ私は愛おしいんですっ!」


「…俺多分今世界一の幸せ者だと思う」


「大げさです!」


「いや本気。好きな子と居られるだけで幸せなのに、両想いで、彼女になってくれるって、そんな幸せあっていいの?俺そんないい子だっけ?」


「先輩がいい子かはともかく、私は全然いいと思います!何なら私これからも先輩を幸せにします…!」


「…っぷ、逆プロポーズ?」


ははっと意地悪そうに、けど嬉しそうに見えた先輩の顔に私はハッと我に帰る。


早まっちゃった…!


「彩と幸せになるって宇宙一幸せだね」


「スケール大きくなりました…!?」


「ありがとう、彩」


これでもかと思うほど先輩は幸せそうに微笑む。


櫂先輩は私を見つめてきて、私も櫂先輩を見つめ返す。


櫂先輩、それは私が言う言葉です。


私に出会ってくれて、好きになってくれて、笑顔にさせてくれて、ありがとう。


「これからも櫂先輩のこといっぱい好きにさせますからね!」


「俺も彩のこともっと好きにさせるから」


大好きです、先輩。


温かい火が灯る光を見つめて私たち2人は微笑み合った。
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