ロミオとジュリエットにはほど遠い
第4章 幸樹の思い
◯自宅・幸樹の部屋(深夜)
幸樹に誘われ話し合うため部屋に留まる鞠絵。
幸樹の部屋は難しい本や資料がいっぱいで、いかにも研究者という感じ。
鞠絵はベッドに、幸樹は椅子に腰掛けて向かい合っている。
幸樹「……鞠絵さん、はじめに言っておくけど」
幸樹「俺は、君の祖父を許さない」
幸樹の眼光は鋭く、声も低い。
鞠絵は一瞬たじろぐが、それはそうだろうとうなずく。
幸樹「君とも、必要以上に関わるつもりはない」
鞠絵はショックを受ける。
鞠絵(当たり前だわ)
鞠絵(こうして真正面から話してくれるだけ、この人は優しい)
鞠絵は唇を噛みしめながらもうなずこうとする。
幸樹「……ごめん、やっぱり無理だ」
鞠絵「ええ、すぐに出ます」
一緒の空間に居ることさえ無理だと思われている、と考えた鞠絵は部屋から出ようとする。
幸樹「違う!」
幸樹「……必要以上に関わらないのは、やっぱり無理だ」
鞠絵「……幸樹さん、それはダメですよ」
鞠絵「必要なときは、一緒にいないと」
必要なときも関わりたくないのか……と悲しく思いつつも、鞠絵は幸樹を説得しようとする。
幸樹「そうじゃなくて、逆なんだ」
幸樹は立ちあがって鞠絵と目を合わせる。
幸樹「俺は、鞠絵さんと必要じゃなくても一緒にいたい」
深夜で物音は彼らが出す音だけ。
鞠絵は幸樹に言われたことが理解できなくて、無表情になっている。
鞠絵「……嘘」
ようやくそれだけ言った。
鞠絵は泣きそうな顔をしている。
鞠絵「幸樹さんは、私や母を……あなたたち父子を裏切った私たちを恨んでる」
幸樹「鞠絵さん、ちゃんと聞いてくれ」
幸樹「俺が恨んでるのは君の祖父だけだ」
幸樹は鞠絵に手を伸ばす。
拒絶するようにビクッとする鞠絵。
幸樹は手を下ろして鞠絵の前でひざまづき、手を握る。
幸樹「君を恨む? とんでもない」
幸樹「俺は、君を愛してる」
幸樹「8年前から、ずっと」
幸樹の真剣な表情にドキドキする鞠絵。
だがすぐに顔を背ける。
鞠絵「……いいの、気をつかわなくても」
鞠絵「あなたは私のことを迷惑がってたでしょう?」
鞠絵「それに関しては、改めて謝罪させてもらうわ」
幸樹は驚いた顔をする。
幸樹「俺が、君を?」
幸樹「どうしてそう思ったんだ?」
鞠絵は疲れた様子でさりげなく幸樹の手を解く。
鞠絵「私は……あなたに相応しい妹になりたくて、何でもしたわ」
鞠絵「だけど、それをあなた本人にやめてくれと言われて気づいたの」
鞠絵「私がしたことは、あなたにとって迷惑でしかなかった」
幸樹が突然、額を床に擦りつける。
鞠絵は土下座をした幸樹に驚いて固まる。
幸樹「すまない、君にそこまで思わせていたなんて」
幸樹「あのときの気持ちを、今度はきちんと伝えさせてほしい」
鞠絵「……まず、頭をあげてほしいわ」
鞠絵は若干引き気味になっている。
幸樹は慌てて立ちあがり、鞠絵をもう一度ベッドに座らせて自分は椅子に座る。
幸樹「……あれは、鞠絵さんがしてくれたことを迷惑がっていたわけじゃないんだ」
幸樹「あのままだと鞠絵さんは壊れてしまうと……怖くなったんだ」
鞠絵「私が、壊れる?」
幸樹「そうだ」
幸樹は膝においた自分の手に目を落とす。
幸樹「鞠絵さんは勉強もスポーツもがんばる努力家だって、最初は思ってた」
幸樹「でも、俺の世話をかいがいしく焼いてくれるようになってから、違うなって思うようになった」
幸樹「鞠絵さんは俺の家来や召使いじゃない」
幸樹「鞠絵さんが倒れたあのとき、もっと早く言っておけばよかったって、そう思ったよ」
鞠絵は記憶にある、幸樹の困ったような笑顔を思い出す。
幸樹「鞠絵さんとは上下関係じゃなくて、対等な関係でいたいと思ってたから……余計に」
鞠絵「幸樹さん……」
鞠絵「だったら、どうして最初にあんなことを?」
鞠絵「必要以上に関わらないって……」
鞠絵はまだ幸樹を疑っている様子。
幸樹は視線を鞠絵の顔に向ける。
幸樹「君の祖父との約束だ」
鞠絵の脳内に、祖父の後ろ姿が浮かぶ。
幸樹に誘われ話し合うため部屋に留まる鞠絵。
幸樹の部屋は難しい本や資料がいっぱいで、いかにも研究者という感じ。
鞠絵はベッドに、幸樹は椅子に腰掛けて向かい合っている。
幸樹「……鞠絵さん、はじめに言っておくけど」
幸樹「俺は、君の祖父を許さない」
幸樹の眼光は鋭く、声も低い。
鞠絵は一瞬たじろぐが、それはそうだろうとうなずく。
幸樹「君とも、必要以上に関わるつもりはない」
鞠絵はショックを受ける。
鞠絵(当たり前だわ)
鞠絵(こうして真正面から話してくれるだけ、この人は優しい)
鞠絵は唇を噛みしめながらもうなずこうとする。
幸樹「……ごめん、やっぱり無理だ」
鞠絵「ええ、すぐに出ます」
一緒の空間に居ることさえ無理だと思われている、と考えた鞠絵は部屋から出ようとする。
幸樹「違う!」
幸樹「……必要以上に関わらないのは、やっぱり無理だ」
鞠絵「……幸樹さん、それはダメですよ」
鞠絵「必要なときは、一緒にいないと」
必要なときも関わりたくないのか……と悲しく思いつつも、鞠絵は幸樹を説得しようとする。
幸樹「そうじゃなくて、逆なんだ」
幸樹は立ちあがって鞠絵と目を合わせる。
幸樹「俺は、鞠絵さんと必要じゃなくても一緒にいたい」
深夜で物音は彼らが出す音だけ。
鞠絵は幸樹に言われたことが理解できなくて、無表情になっている。
鞠絵「……嘘」
ようやくそれだけ言った。
鞠絵は泣きそうな顔をしている。
鞠絵「幸樹さんは、私や母を……あなたたち父子を裏切った私たちを恨んでる」
幸樹「鞠絵さん、ちゃんと聞いてくれ」
幸樹「俺が恨んでるのは君の祖父だけだ」
幸樹は鞠絵に手を伸ばす。
拒絶するようにビクッとする鞠絵。
幸樹は手を下ろして鞠絵の前でひざまづき、手を握る。
幸樹「君を恨む? とんでもない」
幸樹「俺は、君を愛してる」
幸樹「8年前から、ずっと」
幸樹の真剣な表情にドキドキする鞠絵。
だがすぐに顔を背ける。
鞠絵「……いいの、気をつかわなくても」
鞠絵「あなたは私のことを迷惑がってたでしょう?」
鞠絵「それに関しては、改めて謝罪させてもらうわ」
幸樹は驚いた顔をする。
幸樹「俺が、君を?」
幸樹「どうしてそう思ったんだ?」
鞠絵は疲れた様子でさりげなく幸樹の手を解く。
鞠絵「私は……あなたに相応しい妹になりたくて、何でもしたわ」
鞠絵「だけど、それをあなた本人にやめてくれと言われて気づいたの」
鞠絵「私がしたことは、あなたにとって迷惑でしかなかった」
幸樹が突然、額を床に擦りつける。
鞠絵は土下座をした幸樹に驚いて固まる。
幸樹「すまない、君にそこまで思わせていたなんて」
幸樹「あのときの気持ちを、今度はきちんと伝えさせてほしい」
鞠絵「……まず、頭をあげてほしいわ」
鞠絵は若干引き気味になっている。
幸樹は慌てて立ちあがり、鞠絵をもう一度ベッドに座らせて自分は椅子に座る。
幸樹「……あれは、鞠絵さんがしてくれたことを迷惑がっていたわけじゃないんだ」
幸樹「あのままだと鞠絵さんは壊れてしまうと……怖くなったんだ」
鞠絵「私が、壊れる?」
幸樹「そうだ」
幸樹は膝においた自分の手に目を落とす。
幸樹「鞠絵さんは勉強もスポーツもがんばる努力家だって、最初は思ってた」
幸樹「でも、俺の世話をかいがいしく焼いてくれるようになってから、違うなって思うようになった」
幸樹「鞠絵さんは俺の家来や召使いじゃない」
幸樹「鞠絵さんが倒れたあのとき、もっと早く言っておけばよかったって、そう思ったよ」
鞠絵は記憶にある、幸樹の困ったような笑顔を思い出す。
幸樹「鞠絵さんとは上下関係じゃなくて、対等な関係でいたいと思ってたから……余計に」
鞠絵「幸樹さん……」
鞠絵「だったら、どうして最初にあんなことを?」
鞠絵「必要以上に関わらないって……」
鞠絵はまだ幸樹を疑っている様子。
幸樹は視線を鞠絵の顔に向ける。
幸樹「君の祖父との約束だ」
鞠絵の脳内に、祖父の後ろ姿が浮かぶ。