「とりあえず俺に愛されとけば?」
「でも、本当にずるいのは、私です……」
佐倉さんの思いを、
「嬉しいと思って、しまいました……」
「俺にとっては好都合だな」
イルミネーションの光が佐倉さんを照らす。キラキラに輝く彼はコートのポケットから見覚えのある小さな瓶を取り出した。
「ちなみにこれ、誕生日プレゼント。受け取ってもらわないと困る」
眉尻を下げながら彼が私に差し出したのは今日発売のSAKURAの香水瓶。
私が一度、佐倉さんに返したものだ。
「誕生日おめでとう。なずなのために作ったのになずなに受け取ってもらえなかったら意味がない。それともこの香り嫌いか?嫌いなら作り直して、」
「とんでもないです!素敵な香りです!」
作り直すなんてとんでもない!本当に素敵な香りで多分普通にSAKURAの新作だと知っていたら購入している。
私が言えば佐倉さんは優しく笑みをこぼす。
そんな嬉しそうに笑わないでほしい。
「使ってくれたら、嬉しい」
そっと差し出された香水瓶を受け取った。
と、シャラリと瓶の口にネックレスのようなチェーンが巻きつけられていて。
そこには白とピンクのキラキラと光る小さな石がついた指輪がひとつ。瓶に当たって音を立てた。
お店で見た時、こんなのついていただろうか?