「とりあえず俺に愛されとけば?」
「え、なになずな、もしかして自慢?どうしようとか言ってたくせにあたしに自慢してんの!?」
「違う!」
「じゃあなにさ」
「これ、この商品名どっかで聞いたことあるような気がしない?」
「“あなたに私の全てを捧げます”?」
「そう!」
「んー」と考え込む香澄。この言葉が私の中でつかえていて、モヤモヤする。どこかで見たのか、聞いたのか。
「恋愛ドラマとか、小説とかでよくありそうな言葉だけどね」
確かにそう言われればそうなんだけど。
でもなんかしっくりこない。そういうのではなくてなにかもっと別のもの。
「んー、なんか違うんだよね……」
「てか、なずなの為に作ったって言ってたんだから佐倉さんからの愛のメッセージなんじゃないの!『俺の全てはなずな、君のものだよ』てきな」
「香澄、そういう少女漫画みたいな展開好きだよね」
「なに言ってんの女子はみんな好きでしょ、自分に都合のいい妄想」
ドヤ顔をお見舞いされ、苦笑いで返す。まんまと香澄のペースに乗せられ、なにも分からず終いのまま駅にたどり着いた。
「じゃ、また明日」と、方向の違う香澄と別れとりあえず香水をバックに入れ、家に持ち帰った。