「とりあえず俺に愛されとけば?」
「そんな綾瀬にちょっと頼みがあるんだけど」
「なんでしょうか?」
マグカップを数え終え、隣に置いてあるコースターの枚数を数えながら声だけで店長に返事をした。
店長の方を見れないのは、気持ちがバレてしまいそうで不安なのと、あとは、なんだかちょっとだけ嫌な予感がするから。
「再来週、彼女の誕生日でSAKURAでなにか買いたいんだけど、お客さん女性ばかりでひとりだとちょっと入りにくいんだよ」
ほら、ね。
「詳しい綾瀬に一緒に行ってもらって、オススメの商品とか色々教えてほしいんだけど。もちろん日程は綾瀬の都合に合わせるし」
「……」
店長の方は見ずに、コースターを置いて正の字を書く。自分でもびっくりしたけれど視界がジワリと滲んだ。