「とりあえず俺に愛されとけば?」
香水のパッケージを見て、この前佐倉さんに言われた言葉がぽろぽろと頭の中に落ちてくる。
“なずなの為に作った商品だ。それに、俺がどうしようと、俺の会社の商品だ気にするな”
“1月17日だろう。だからこの香水の発売日もその日にした”
私の為なんて、意味が分からない。しかも、誕生日もいったいどこで入手したのか。
「はぁー……」
ここ最近、森坂店長に失恋したショックと佐倉さんの登場で、普段使わない頭の中はぐちゃぐちゃで、しかもフル活動させているからなんだか疲れてしまった。
考えたってどうせ分からないのに。だからちょっと休憩しよう。
ふとした瞬間に思い出すかもしれないし。きっと、思い出そうとするから迷子になるのだ。
「よし!」と気合を入れて鞄を持ち更衣室から出た私は森坂店長に言われた通り先に店の外に出て店長を待った。
私が外に出てから5分も経たないうちに店長が姿を見せる。
「よし、じゃあ今日は宜しくお願いします!」
「店長なんですかそれ、改まって」
「いやだって、俺の私用に綾瀬の時間を貰うわけだから」
本当にこういう優しさがぎゅっと胸を締め付ける。店長は、なにも悪くない。ただ、私にはちょっと優しすぎる。