「とりあえず俺に愛されとけば?」
「店長、それ来月発売の新商品で予約を受付してるんですよ……」
「へー、そうなのか。
『あなたに私の全てを捧げます』
shepherd’s purse & cherry blossom fragrance。
あ、香水か随分オシャレなネーミングだな」
「……はい、可愛いですよね」
まさか森坂店長がこの香水に興味を持つとは思わなかった。なんとなく気まずいのは、佐倉さんにあんなことを言われたからだ。
「可愛いけど、まあ、来月発売じゃ間に合わないしな」
「あ、彼女さんのお誕生日再来週っておっしゃってましたもんね」
テプラでテスターと貼られた香水瓶を店長は自分の手首にワンプッシュした。その瞬間、爽やかで甘いフローラルな香りが鼻を擽る。
「へー、いい香りだ」
「本当ですね!」
あの日は遠くから香った匂いを嗅いだだけで、直接香りを体験したのは初めてだったので、好みの香りに思わず素で反応してしまった。
私の反応を見た森坂店長は「じゃあさ、」となにやらニコニコしながら私の顔を見つめてくる。