「とりあえず俺に愛されとけば?」
「素敵な香りの香水ですね」
「ありがとうございます。新作で来月発売なんですよ。今日はプレゼントをお探しですか?」
「そうなんですよ、彼女の誕生日プレゼントを買いに」
「左様で御座いますか」
佐倉さんの言葉に普通に会話を始める森坂店長。その様子に店長は佐倉さんと私のことはなにも知らないし、佐倉さんとも知り合いではないのだと悟った。
お喋りな香澄が話したなんて、香澄に申し訳ないことを考えてしまった。ごめんね香澄。なんてこの状況から逃避するように違うことを考える。
いま、この状況は、気まずい以外の何物でもない。
「あ、申し訳御座いません。ご挨拶させていただいてませんでしたね。
私このSAKURAの社長をしております、佐倉と申します。
宜しければいくつか商品をご紹介させていただいても宜しいですか?」
「あ、本当ですか!社長さん自ら案内してくださるなんて光栄です。ぜひ宜しくお願いします!」
「ではいくつか商品をお持ちしますので奥のテーブルにご案内致しますね。そちらでお待ち下さい」
淡々と進んでいくふたりのやり取りを傍観していればちらりと佐倉さんの視線がこちらに向いた。