「とりあえず俺に愛されとけば?」





目が合ってしまった……。


今日も綺麗なお顔ですね。なんて褒めと嫌味を含んだ感想を音にはせずに飲み込む。



こちらに近づいて来て距離を詰めた佐倉さん。逃げるように後退れば長い足でそんなちっぽけな溝は一瞬で無かったものにされてしまった。



いったい、なんでしょうか……?
逃げられないことを悟った私は大人しくその場に立ち尽くし佐倉さんの行動を伺った。



佐倉さんは私の背に合わせるように腰を曲げると先ほどまでの営業口調をなくして耳元で私にしか聞こえないように言葉を落とす。




「なずなの好きな奴って、あいつだろ」

「え、いや、あの、」

「分かりやすすぎ、」

「え!」

「あいつの言ってる彼女って、まさかなずなのことじゃないだろうな?」

「違います!」

「じゃあ、なんでわざわざここに一緒に来てるんだ?」

「それは店長に頼まれたので、」

「本当にそれだけか?」




佐倉さんはスッと姿勢を戻すと眉尻を下げて、ちょっぴり悲しそうに小さく呟いた。













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