「とりあえず俺に愛されとけば?」
冷んやりと冷たいタオルに、温かいコーヒー、佐倉さんの優しさ。じんわり、視界が滲む。それがバレないようにそっと上を向いて、目元にタオルを乗せた。
閉ざされた暗闇の中で、先ほど彼女さんのためにプレゼントを選んで喜んでいた森坂店長の笑顔がパッと鮮明に浮かぶ。
忘れようと思うのに、忘れられなくて。
もし、佐倉さんと付き合えば森坂店長を好きなこの気持ちは消えるのかな。
なんて。
数日前、突然現れて意味の分からないことを言う佐倉さんをなんだこの人って思ったのは事実で。
強引なところもあるし、なんか自信がありすぎるところもどうかと思うけど、不器用に優しくて、何度断っても私のこと好きって言ってくるし。
“優しく、しないで、ください……”
“するでしょ?好きな女が弱ってたら”
“なんで、気づくんですか、私が泣きそうなんて……”
“気づくでしょ?好きな女が困ってたら”
だから、私もちゃんとしなければいけない。このままずるずる優しさに甘えてはいけない。