「とりあえず俺に愛されとけば?」





「だから私は、私の心に森坂店長がまだいるのに、」

「……」

「佐倉さんとお付き合いすることは……できません」

「……」

「……」

「俺が、それでもいいって言っても?」

「ダメです。だって、私を好きだと言ってくれた佐倉さんをこれ以上、私の勝手で傷つけたくない」




己の両肘を腿につき前に重心を預けた佐倉さんは覗き込むように真剣な眼差しで、こんな身勝手で醜い私を見つめる。




「たとえばを考えるんです……。森坂店長がもし、いまの彼女さんと上手くいってなくて、でも森坂店長はまだ彼女さんが好きで、そんな時に私が気持ちを伝えて付き合えたとしても森坂店長が見ているのは彼女さんで、私はたぶん身代わりになれるだけなんじゃないかって。だったら、」

「……」

「本気で気持ちを伝えた私に、本気の気持ちを返してほしいって思っちゃったんです。それが断りの返事でも、本気でぶつかった甲斐があるなって私なら思うんです」




< 69 / 110 >

この作品をシェア

pagetop