「とりあえず俺に愛されとけば?」



いったいなんだろう。
なにかミスでもしてしまったのかと不安が過ぎる。



「なずな先輩宛にお客さんがいらっしゃってるんですが、」

「私宛のお客さん?」

「はい。でも、もう着替え終わっちゃいましたよね……」



その言葉に、ため息の原因は私が制服ではないことかと、仕事のミスではなくてホッとした。



「誰だろう?名前聞いてくれた?」

「いえ、綾瀬 なずなさんいますか?って聞かれてお名前お伺いしたんですけど教えてもらえなくて、会わせてくださいって言われたので呼びにきました」

「女性?」

「いいえ、男性です。スラッとした背の高い中性的で綺麗なモデルさんみたいな顔の」



美空ちゃんの説明に頭の中は、はてなだらけで。
誰だろう?お客さんにそんな人いただろうか?知り合いにもそんなイケメン思い当たる人がいないし。



「分からない。誰だろ」

「すみません、まだいるので呼んできますって言ってしまってて」

「会ったら思い出せるかもだから、行ってくるね」



お客さんだったら見たら思い出すだろうと「店頭行ってくる」という言葉をふたりに残してストックルームの扉を開いた。


店頭に出て視線をきょろきょろ。美空ちゃんの説明を頼りにそれっぽい人を探す。



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