「とりあえず俺に愛されとけば?」
「え、じゃあなずなの名前と、花言葉をかけて商品名にしたってこと!?あの社長やることがオシャレすぎるんだけど」
「でも、たまたまなずなの花言葉が素敵で商品にしようと思ってて、そうしたら、たまたま私の名前がなずなだっただけ、かも」
「いや、もしそうならなずなのために作ったなんてわざわざ言わないでしょ!」
「そーかな……?」
「絶対そうでしょ!なずながもし、楓とか椿とか、梅とかいう名前なら商品名は絶対その花の花言葉になってるって!」
なぜか香澄が自信満々にそう言い切る。
「えー、なんかドラマみたいですっごい素敵なんだけど!!人生でそんなことある!?自分の名前の花の花言葉を商品名にしてプレゼントしてくれる男なんていないよ!!てか普通のサラリーマンにはできないよ!」
息継ぎもせず興奮気味に言い切った香澄。あー、彼女の得意な都合のいい妄想とやらが炸裂している。
コンビニの袋の中から予備でもらっていた新しいスプーンを開ける香澄に終始「いいなー」と羨望の眼差しを向けられてちょっぴり罪悪感。
だって、私はその香水をあろうことか返却したのだから。
「あ!!」
「え、なに」
とりあえずそれは黙っておこうと再び親子丼をつつけば、突然叫ばれてとても心臓に悪い。
「あたしの名前、香澄だから!」
「だから?」
「ちょっとスマホかして!」
「うん」
テーブルの上にあったさきほどなずなの花言葉を調べていた私のスマホを操作して何かを打ち込む香澄。