「とりあえず俺に愛されとけば?」
「見てこれ!」
「なに?“カスミソウの花言葉”」
香澄に見せられたスマホの画面に表示された文字を読み上げる。あ、なるほどそういうことかと理解した。
「“カスミソウの花言葉、無垢の愛、感謝、幸福”」
「誰かあたしに“カスミソウの花言葉って知ってる?”って聞いてくれる男はいないの!?」
「なにそれ」
そんな人、そうそういないよ。と香澄の言葉に笑いつつ佐倉さんの言葉を思い返した。
“昔となにも変わってない。そういうところが昔から好きだったのかもな”
“なんでもない。もっと早く来なかった、俺が悪いんだ”
いったい、どういう意味?
「なずな、やっぱり佐倉さんを振ったこと後悔してる?」
ぼーっとする私に、さきほどまでふざけていた香澄が真剣な口調で、気にかけるように問いかける。
私が心配させるような顔をしてしまっていたんだと反省した。
「そうじゃないんだけど、なんか分からないことが多すぎて」
「そっか、なずなは佐倉さんのこと覚えてなかったんだもんね」
「うん」
「そんなしんみりしないでよ!てか思い出してほしいなら佐倉さんも、いつ会っててとか言ってくるでしょ!それを言わないってことは、その程度なんじゃないの!?」
「うん……」
「あれ、でもなずなの名前から香水作るくらいだし、好きって言うのは本当なの?あれ……?」
私を励まそうとしてくれて、私と同じループに陥る香澄。本当に香澄の言うとおりで。