「とりあえず俺に愛されとけば?」
「ねぇ、これ絶対なずなのことでしょ!!」
「いや、でも私、小学生のときに佐倉さんに会ってる記憶ないし……」
香澄は「間違いない!」と言い切る。
「なずなが忘れてるだけでしょ?」
「んー、」
「思い出して!こんだけのイケメンだよ!小学生のときから、かっこよかったに決まってるって!」
「そーだと思うんだけど……」
《では、この“SAKURA”というブランドを立ち上げたのもその女性のためなんですか?》
《まあ、そうですね。彼女のためというか自分のためなんですが。彼女との約束を果たすためです》
《興味深いお話です》
《僕、小学校5年生のときに父の転勤で転校したんですよ。で、引っ越したマンションの隣に4つ年下の同じ小学校に通う女の子がいまして。
お恥ずかしい話なのですが、僕は小さいころ友達を作るのが苦手で、でもその女の子は引っ越して早々、僕と仲良くしてくれたんです》
《じゃあ、その子が今でも佐倉さんの好きな方なんですね》
《そうです。あいにく、彼女は僕のことを覚えていなかったのですが。まあ、無理もないんですけど。僕、中学生くらいまで見た目が女の子みたいで、苗字も“佐倉”と女の子の名前みたいだからと当時“さくらちゃん”って呼ばれることが多くて》
「え……、」
「どうしたの?なずな?」
「さくら、ちゃん……」
「え、知ってるの!?」
「……うん」
嘘だーー。佐倉さんが、さくらちゃんなの……?
テレビの中の佐倉さんの言葉に思わずフリーズする。
待って、だとしたら、なにもかも全てが繋がる。