「とりあえず俺に愛されとけば?」
《ということは、佐倉社長は昔から美男子だったということですね!》
《小学生に美男子はちょっと恥ずかしいですね。でも、僕も幼かったので可愛いって言われたり、さくらちゃんって呼ばれることにそのときはあまり抵抗はなくて、なんなら佐倉って名前でよかったなと思えることがありまして、》
《なんですか?とても気になります》
《僕の好きなその子の名前が花の名前なんですよ。で、その子が花の名前だから一緒だねって言って喜んでくれて、幼い僕はそれがすごく嬉しくて。可愛いなと、そのとき胸を鷲掴みにされました》
香澄がテーブルに乗り出しながら私の顔を覗き込んでくる。そんな香澄の食べかけの親子丼はカラカラになっていた。
「て、ことはやっぱり、佐倉さんの初恋の人ってなずなで合ってたんじゃん!覚えてないなずなが悪い!」
「え、いや、でもだって、気づかないよ……、女の子だと思ってたんだよ!」
「あ、そっか」
「ちょっと、突然の事実すぎて、頭がついていかないんだけど、」
パキッと水の入ったペットボトルの蓋を開け、とりあえず落ち着こうと体内へ水を流し込む。
そんなこと、ある……?
あのさくらちゃんが、佐倉さんだったなんて。