「とりあえず俺に愛されとけば?」
《SAKURAを立ち上げたのもその子に“さくらがきれいでかわいい”と言われたからで、僕の全てはもうずっと彼女を中心に回っているんです》
《えー、まるでドラマのようなお話ですね!このお話を聞いてその方はとても喜ばれたのではないですか?》
はじめて聞いたよ。何度聞いても教えてくれなくて。そういえばあの日さくらちゃんも言っていたっけ。
『あとは、“わたしをわすれないで”』
『え?』
消え入りそうな声でさくらちゃんが呟いた。
『わすれないで?さくらちゃん、なにかわすれもの?』
『あのさ、なずなちゃん!いまはまだむりだけど、さくらがずっとずっと大きくなって自分でお金もかせげるようになったらそしたら、なずなちゃんになずなの花をプレゼントするから、なずなちゃんのすべてをさくらにちょうだい!』
当時の私は意味なんて分かってなくて、大好きなさくらちゃんが言うことだからと、とりあえず受け入れていた。
『いいよ!』
『ほんとう!?じゃあ、やくそくだよ!ぜったいわすれちゃダメだからね!!』
『うん!』
『大きくなったら、さくらはなずなちゃんをむかえにくるね!』
『うん、やくそく!』
ゆびきりげんまんをした。とても純粋で残酷な約束。