「とりあえず俺に愛されとけば?」
「なずな、誕生日おめでとう」
番組が再びCMになった。それまで静かだった香澄がCMになった途端、
「え、なずな!もうこんなの確定じゃん!え、あたしいま、なんか凄いものを見てる!嘘、え!え?え!」
「……香澄、ちょっと落ち着いて」
「は?何言ってんの?てか、なんでなずなはそんなに落ち着いてるの!自分のことでしょ!」
混乱気味に言葉にならない言葉を吐き出しながら、バンッとテーブルに手をついてじっと私を見てくる香澄。怖いって……。
「……たしかに私のことなんだけど、それを知ったからって、佐倉さんとどうこうなるわけじゃ」
「でも18年だよ!18年!小学生のときから一途になずなのことずっと好きだったんだよ!」
「……それは、私がいちばんびっくりしてる……さくらちゃんが佐倉さんだったことも……」
「佐倉さんのなにが気に入らないの!?」
「いや、気に入らないもなにも何も知らないんだよ、佐倉さんのこと」
両腕を組んだ香澄は、私の回答に「確かに」と言って頷く。
テレビ画面ではタイミングを測ったかのように番組が始まった。
《佐倉社長の素敵な恋のお話に、聞き入ってしまいましたが、ここで明日発売の新作の香水のお話を聞いてもよろしいですか?》
《はい、ぜひ。SAKURAの新作の香水が明日1月17日に発売となります。先ほどもお話した通り、僕の初恋の女性へのプレゼントとして作った特別な香水です》
《なんとこちらに香水を用意していただきました!》
CMあけ、女性アナウンサーは先ほどまで持っていなかった香水の瓶をカメラに向けると、自分の手首にワンプッシュし、香りをかいでみせた。