「とりあえず俺に愛されとけば?」
「え、どうしよう、香澄……」
「いや、あたしに聞かれても」
「なにか、あるのかな……?」
「あたしが佐倉さんなら、絶対会いに行く!」
違う番組の始まったテレビにリモコンを向ける香澄に問いかければ彼女らしい返答。
テレビを消した香澄は私を見かねてか「はぁー」っとため息を吐き出す。
「なずな最近、森坂店長のこと引きずってる感じないよね」
「え、なに急に……」
「どーなの?」
「たしかにもう、なんともない……」
「あたしは、それって佐倉さんのおかげだと思うんだけどなー」
ぐいっと私の顔を覗き込んだ香澄は、にこっと笑った。
「良くも悪くも、佐倉さんに出会ってからのなずなは毎日一瞬でも佐倉さんのこと考えてたでしょ?」
「……うん」
「いつの間にか、森坂店長より佐倉さんのことを考える時間が多くなってたと思うんだよなー」
「たしかに……」
「だから、あたしは次の恋の相手は佐倉さんがいいのでは?と思ってます!」
「なにそれ」
「いいじゃん!もう、次の恋をはじめても!」
ふざけた口調で言いながら香澄はカラカラになった親子丼のゴミをコンビニの袋にまとめる。