「とりあえず俺に愛されとけば?」




「ま、こんなこと言ってるけど、明日なんにもなかったらごめんね!全部あたしの妄想だから」





と、言った香澄の妄想が見事的中したことに私は驚いている。

妄想者じゃなくて、香澄は予言者なのではと思った。



ーー1月17日、今日は私の誕生日。誕生日だからといって特に予定もない私は普通に朝から出勤をして仕事をしていた。

お昼にはお店のメンバーに誕生日を祝ってもらい、香澄には「佐倉さんからなんかあった?」と朝から茶々を入れられ、なんだかんだ上りの時間。

やっぱり香澄の妄想はただの妄想だったなと思いながら、着替えを終え「お疲れ様です」とみんなに挨拶をして店を出た。

いつも通りの日常。昨日、テレビで見た全ては夢だったのではと思うくらいに。

ケーキでも買って、自分で自分のお祝いでもしようかと思っているところだった。




「……え、うそ、」




寒空の下、茶色のロングコートに身を包み白い息を吐き出す男性が1人。

私を見つけたその人は大きな花束を持ってこちらに歩いてくる。

いったい、いつからそこにいたんだろう。




「……さ、くら、さん」














< 96 / 110 >

この作品をシェア

pagetop