寝ても覚めても、離してやんない


 詳しく話を聞いたところ、わたしは暖との登校途中に眠ってしまったらしい。

 暖はわたしをおんぶして、学校まで連れてきてくれたというわけだった。

 着替えた記憶はあるけど、外に出た記憶はない。暖に挨拶した記憶も……。


 睡眠不足の代償が如実に現れている。

 一日でこれって……わたし、結構重症だったんだ。



「……ごめん」

「今日はうち来るか?」

「んー……」



 どうしようか。

 ここで暖に甘えたら、もうどうでもよくなるような気がする。

 せっかくの決意が無駄になるんじゃないかな。



「もうちょっと頑張ってみる」

「でも……」

「あ、じゃあさ」



 わたしはスマホを取り出し、暖に向けた。



「『おやすみ』って言ってよ」



 睡眠導入剤としてさ。

 録音して、寝る前にいっぱい聞く。


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