キスマーク
今日やった失敗を指折り数えていたら、またはぁーっと課長がため息をついた。

「……もー、いい」

がっくりと彼のあたまが落ちる。

「お前のそういう失敗、いちいち注意していたらそれだけで一日終わる……」

酷い言われようだとは思うが、それくらい多いのだから仕方ない。

「すみません」

けれど、呼び出されたのがこれらの失敗じゃないということは、いったいなんなんだろう?

「それでな。
……見えてるんだ、ここ」

ちょんちょん、と課長が自分の首筋をつつく。
しかしボートネックカットソーにカーディガンなんてスタイルの、私の首が見えているのは当たり前なわけで。

「だからー、……キスマークが」

途端にボッ!と顔が火を噴く。
そんなことを男性から、しかも課長に報告されていたなんて。

「あの、その、えっと、あの」

朝眠くて、ろくに鏡をチェックしなかった自分を後悔した。
こんなものを晒して仕事をしていたなんて、恥ずかしすぎる。
いったい、何人の人が気付いたんだろう。
早く指摘してくれればいいのに!

「そういうのはちゃんと確かめて隠してこい」

< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop