野いちご学園 逆ハーアイドル寮
「……姫歌……ちゃん?」
私の耳に入り込んできた、直月君の辛そうな声。
「僕が姫歌ちゃんを、傷つけてしまったのか?」
否定しなきゃと焦っても、心臓の痛みで喉が締め付けられ声が出ない。
……っ!
遠くにいる絢人先生と目が合ってしまった。
どうしよう。
私を心配しているような顔で、こっちに向かって走って来るよ。
逃げなきゃ!
こんな醜い泣き顔、先生に見られたくない。
これ以上、先生に嫌われたくない。
「これ、使って」
心配声の直月君が、青いハンカチを差し出してくれたけれど
「ごっ、ごめんなさい」
私は泣き顔をブレザーの袖で隠しながら、走って校舎の中に逃げ込んだ。