野いちご学園 逆ハーアイドル寮
顔を歪めた私の表情を、総長様は見逃さなかったみたい。
不機嫌顔で腕組みをした総長様は、対面する絢人先生に冷酷な視線を突き刺した。
「絢人先生は、過去の花園姫歌しか瞳に映していないんじゃねーの?」
「東条くん、どういうことですか?」
「こいつにはできない、無理、そう決めつけてるけど。本当にそうなのか?ってことだよ」
「ですが花園さんは、友達と話せないほどの人見知りですし……」
「最近の姫歌は違うって言ってんの。ちゃんと見てやれよ。びくびくしながら長い前髪で視界を遮ってた女が、他人と目を合わせられるようになったこと。クラスメイトや俺たちと、会話ができるようになったこと」
「……私も、花園さんの頑張りには気づいていましたが」
「紹介MCをするのは過去の姫歌じゃない、未来の姫歌だ。こいつはもっともっと成長する。そしてステージの上で、観客全員を魅了するだろうな」
「……」
「生徒の過去に囚われて、未来の可能性を潰そうとする人を、俺は先生として尊敬したくはない」