野いちご学園 逆ハーアイドル寮
良かったんだ、紹介MCを辞退して……
本当にこれで良かったんだ……
そう、頭では納得しているはずなのに……
なんで私は、涙が止まらないんだろう?
悔しいという思いが心の中を支配して、苦しくてしんどくてたまらない。
「彼らの魅力にどっぷり沼ってくださいね。野いちご学園高等部・異色ぞろいのボーイズユニット・甘ロべです!」
美人スマイルをふりまきながら、稲森さんが手のひらでステージ袖をさした。
重厚なカーテンの隙間から自信満々な笑みを浮かべ登場したのは、総長様、環くん、とばり君、直月くん。
白い王子様風タキシードに身を包み、ふくらはぎが隠れるくらい長い真っ赤なサンタマントを羽織っている。
「ハ~イ! みんな、お・待・た・せ!」
第一声は、艶っぽいウインクを飛ばしたとばり君。
彼のファンサは、民を魅了する魔力を秘めているらしい。
耳を塞ぎたくなるほどのキャーキャー声が、客席で渦を巻いた後
「生のとばり君が尊い~」
「無理~、神すぎて直視できない~」
心臓を押さえながら、椅子に縮こまる人が続出しちゃった。