野いちご学園 逆ハーアイドル寮
「私は28歳ですからね。そろそろ身を固めるべきだと思いますし」
……そうですか。
……私は確実に、失恋したってことですか。
大泣きしたいくらいの悲しみを押し殺して笑っていられるほど、私はできた人間ではありません。
むしろメンタルが絹豆腐の、ナメクジじめじめ闇人間なので
「帰ります……絢人先生……さようなら……」
安心してください。
もう絢人先生には、付きまといませんから。
無表情のまま、机に置いてあったカバンを肩にかけた私。
「えっ? 花園さん、帰るんですか? それならこの楽譜を持って帰って……」
「先生のために作った曲なんです……。先生がいらないのなら……ゴミ箱に捨ててください……」
うっと込み上げてくる涙を必死にまぶたの奥に押し戻しながら、私は生物準備室から逃げ出したのでした。