野いちご学園 逆ハーアイドル寮

「私は28歳ですからね。そろそろ身を固めるべきだと思いますし」



……そうですか。

……私は確実に、失恋したってことですか。



大泣きしたいくらいの悲しみを押し殺して笑っていられるほど、私はできた人間ではありません。


むしろメンタルが絹豆腐の、ナメクジじめじめ闇人間なので



「帰ります……絢人先生……さようなら……」



安心してください。

もう絢人先生には、付きまといませんから。





無表情のまま、机に置いてあったカバンを肩にかけた私。



「えっ? 花園さん、帰るんですか? それならこの楽譜を持って帰って……」


「先生のために作った曲なんです……。先生がいらないのなら……ゴミ箱に捨ててください……」



うっと込み上げてくる涙を必死にまぶたの奥に押し戻しながら、私は生物準備室から逃げ出したのでした。








< 9 / 290 >

この作品をシェア

pagetop