野いちご学園 逆ハーアイドル寮
長い前髪で視界を極力遮ること。
それは私にとって、心の守り方なんです。
友達がいない私は、他人から飛んでくる視線が極端に怖くて。
人の表情から心の中を予想して、勝手に不安になってしまうタイプ。
相手の顔が視界に入らないだけで、集団生活が少しだけ楽になると思っています。
「あああっ……ありがとう…ござい…ました……」
か細い声しか吐き出せない代わりに、運転手さんにオーバーに頭を下げバスを降りる。
陰キャな私のことなんて、誰も気にしない。
髪型を変えたくらいで、注目されるはずもない。
そんなこと、わかっているはずなのに。
手よりも長い袖の先っぽで顔を隠さないと、恐怖に飲み込まれそうになる。
私はうつむき、顔を隠しながら、靴箱のある昇降口まで急ぐことにした。