美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
クズなイケメン婚約者。
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ここは、魔法も剣も存在する世界。
王国や王様達が存在し、全ての国や王達を束ねる【帝王】という絶対的王者が存在する世界。
偉大なる帝王がいるおかげで、とてもとても平和な世の中。
そんな素晴らしい世界で、クズ婚約者に悩まされる
それぞれの悲惨なお嬢様、お坊ちゃん達の恋。
それを突破して、形は様々だが自分達の幸せを見つけ
それに向かって奮闘するお話。
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ここは、主人公の家。
現在、主人公はお友達と一緒に中間テストに向けてのお勉強会を開いている。
…のだが…
…ペラ!
♡♡♡♡♡♡
『…今まで、なんにもしなくても勝手に向こうから寄ってきたし。恋人とか面倒くせ〜っつっても、みんなセフレでもいいって言うから、それなら面倒ねーしいっかなって。
溜まるもんは溜まるし、人間オナホくらいにしか思ってねーからアイツらの事。単なる精処理にしか思って無かった。
だけど、おまえだけは違う!
今さら、遅いかも知んねーけど気づいたんだ。
俺は、おまえが他の奴とは違うって!特別なんだって!』
…トゥンク♡
『…え♡?』
『…今まで、ひでー事ばっかして、ごめん!
もう、おまえ以外見ない!おまえだけが大事なんだ!!好きだ、愛してる!!』
『…わ、私も♡!!』
♡♡♡♡♡♡
…ペラ…
「…なんだ、この茶番な漫画は!
ウゲェェ〜〜〜!有りねー!
自分は倫理観もクソもねー、女にだらしね〜。
腰振って種付けしまくってる種馬ヤローなくせに!主人公を虐めまくって蔑ろにして、なのに“今さら、主人公が大好きだったから気にしてほしかった”とか。…ハア?」
…ペラ、ペラ…
と、この物語の主人公である【西園寺 結(さいおんじ ゆい)】は、
漫画の主人公に感情移入して、クズのヒーローをボロクソに悪く言ってた。
なのにだ!
最終的にクズのヒーローが心を入れ替える事によって、二人は結ばれるという結末に、主人公にさえ裏切られた気持ちになり納得出来ない!!と、猛獣の如く吠えていた。
「好きな女がいるくせして、好きでもない不特定多数の女とヤリまくるとは!何でありますか、それは?
意味不明過ぎるでありますぞ。もはや、色んな女とヤリたいだけの下半身モンスター!!気色悪いだけでありますな。
なのに、最後は真実の愛に目覚めましたですとーーーっ!?しかも、それを主人公は許してハッピーエンド?…理解が、理解が追いつけませぬぞ!!」
ぐぬぬぬぅ〜〜っと、主人公の気持ちが理解不能だと頭を掻きむしってる眼鏡のぽっちゃり女子。【財前 陽毬(ざいぜん ひまり)】。
アニメオタクでゲーム好き。アニメは雑食、面白ければいい!
ゲームは、主に恋愛シミュレーションゲームと無双系が大好きな勉強嫌いである。
運動も大嫌いの普段は大人しいが、ゲームや興奮のボルテージが一定以上溜まると人が変わった様に饒舌になる、ちょっと変わった子だ。
…ペラ…
「なんですかぁ〜〜〜っっっ!?これわぁぁぁ〜〜〜!!?…はあ?絶対、あり得ませぬぞ!納得できませぬぅぅ〜〜〜!あまりに、都合良すぎて“魔導弾(格闘ゲームの技名)をブッかましてやりたくなりますぞ!!」
「このクズも、簡単にクズに靡く女もおもっくそ、顔の原型なくなるまでブン殴ってやりてぇぇ〜〜〜!」
と、漫画の物語のオチに納得できない二人が吠えている。そこに
「……ここまで感情移入してもらえて、きっと漫画の作者も喜んでるね。
…けど、テストで赤点取りたくないからって俺達を無理矢理巻き込んで、勉強会開いた張本人が勉強投げだして漫画を読みふけってる事に俺は理解しがたいよ。」
と、困ったように苦笑いにながら、結に話しかけてきたのは
この世の全ての美が集結したかのような美貌の少年【久遠 桔梗(くおん ききょう)】。
桔梗の容姿は、一言で言うなれば全体的に黒。しかし、その黒は、世界一美しい黒曜石…いや、黒ダイヤモンドとでも言うべきだろう。
髪と目は黒から紫のグラデーションがかっていて…あまりにも美しすぎる。
もはや、少年自身が宝石、美の権化と言っても過言でないくらい現実離れした美貌の持ち主だ。
男とも女ともとれるような中性的な容姿のせいか、フェロモン垂れ流しで艶やかだ。だから、女どころか男にも超絶モテモテである。
どこか達観した感じもあるが、大人っぽく紳士的な所がまた人気の秘訣なのかもしれない。
「…好き好んでそんな設定の作品読んでるくせに、よく言うわって思うけど。その気持ち、すっごい分かる気がするわ!」
と、パソコンの画面から顔を上げ
「女遊びの激しいモテモテのイケメンが、なんやかんやかんやあって平凡な少女の純粋な気持ちに惹かれてハッピーエンド。…普通に考えたってない!
だって、イケメンが平凡な女なんて好きになる訳ないもの。
いくらゲスでもイケメンで選び放題なんだから、自分に見合ったゲスな美女を選ぶべきよ!お互いに、自分に見合う相手を選ぶべきだわ。」
と、美しい仕草でテスト勉強しているが、
とてもお口が悪く、自分の思った事をズバズバ容赦なく喋る【常盤 フジ(ときわ ふじ)】。
背も高くスラリとしているのに、出る所はしっかり出て腰のくびれがしっかり際立ち女性の理想を集めたようなスタイルの持ち主。
顔も小さく、首、手足も長いときた。ストレートの美しい黒髪はサラサラでつやっつやのキューティクルがある。
顔は、やや釣り上がった眉に重そうな二重まぶたと大きな目のせいか、気分屋の猫を思わせる様な顔立ちだ。
筋の通った小さめな鼻とぷっくり小さな口も相まって綺麗なのに、可愛いも混じった様な絶妙なバランスを持った小悪魔的顔の超絶美少女である。
その為、生まれた時から蝶よ花よと育てられ、周りももてはやし甘やかし放題甘やかすもんだから、傲慢で我が儘の女王様の爆誕だ。
そこがまたいいと彼女のドMファンも多く、自分達の勝手な下僕・ご奉仕精神で、彼女の身の回りのお世話をするフジの自称親衛隊なんてものも存在する。
「…ふ、二人共、夢がない…。
でも、不良のイケメンが、主人公の中身に惹かれて一途になるって、なんだか夢があるよね!」
漫画の内容に、言いたい放題言いまくる結とフジに圧倒されつつ漫画のフォローしているのは【宝来 ショウ(ほうらい しょう)】。
運動がとってもとっても苦手な、ややぽっちゃりでこれといった特徴などない平々凡々な女子だ。
少し抜けてるいる所があるが雰囲気がふんわり、ほんわかしていて、そんなショウに結は癒されている。一緒にいると何だか、ほっこり安心できる。
「…ショウさぁ。よく考えな、ね?
それは、漫画や小説だから、都合良くできてんの。平凡設定な癖に可愛く描かれる主人公。
平凡で何も取り柄ないっていう主人公なのに、何故かイケメン達にモテモテな主人公。おかしくない?」
「平凡で地味って説明あるのに主人公は、とっても可愛いよね!…はっ!確かに、主人公は色んなイケメン達に好かれるね。
…もしかして、主人公って全然平凡なんかじゃなくて、実はもの凄い美人さんなのかも!」
「…えぇ〜!?どうして、そんな感じの考えに行きついちゃうかな?ちゃんと考えてみ?
実際、自分がそんな事されたらどうよ?」
「そうですぞ?色んな女と体の関係持ちまくりで爛れ汚れきった体を自慢げにモテモテで凄いだろって威張り腐って、主人公を虐めまくるっ!…想像しただけで、ゾッとしまする!!」
と、漫画のクズキャラを思い出し、ムカつくぅ!ムキィ〜〜〜ッッッ!!と、ムキになって語る結と陽毬。
「…はわわ…!そう考えちゃうと、いくらイケメンでも嫌だなぁ。」
なんて、青ざめるショウ。
「…私も、いくら私に見合うくらいのイケメンでも、そんなドクズはないわ。
千年の恋も冷めるって感じかしら?けど、それは現実に考えての話であって…。…あ!…そうだったわ。
“現実にも、それに近いドクズがいるわね”。結が、怪獣化するのも無理はないわ。」
と、フジは意味深な発言をして、何かを思い出したかの様に頭を抱えて頭を振っている。
「この手のドラマや小説って比較的多いわよね?漫画もそうなのね。
やっぱり、実際には受け入れ難くても、想像上だと夢があるものね。ハラハラ、ドキドキが止まらないもの。」
なんて、冷静に作品の分析を始めるフジに
「いくら、漫画や小説でも、下半身で生きてるドクズが心を入れ替えて改心しました。…いや、無理あるだろ!」
「超イケメンだからって、最終的に心清らかな女性と幸せになりましたですと!?
では、今の今までこのドクズが不幸をばら撒いてこられた人間は?…え?イケメンなら何やったって許されるのですか?
不幸にしてきた人達は無視で、自分だけ美味しいどこどり?……ヒィィ〜〜…ッ!全身、鳥肌がたちまする!胸糞が悪いだけですぞ!!」
と、結と陽毬は作品とか関係ない。こういうドクズが、美味しい思いばっかして納得できないと吠えた。
「結や陽毬が、そんな感想を持ってしまうのは仕方ないよね。発散できる時に、できるだけ発散した方がいいよ。嫌な気持ちを溜め込むのはよくないと思うから。」
桔梗は、結の心中を気遣いそんな言葉を掛けてくれた。
「…ありがとな、桔梗君。
でも!!結局、顔かよ!見た目さえ良けりゃ、何でも許されるんかいっっ!!所詮は、容姿かよぉ〜!…クソッ!胸糞悪いなぁ〜〜〜!」
「…おお!イケメンはイケメンでもイケメンレベルが違えば、心までイケメンになるのですな!さすが、人の域をゆうに超えた美貌の持ち主、桔梗君は違いまするな!!」
と、キラキラと希望を持った目で桔梗を見てくる結と陽毬に圧倒され、桔梗は引き気味に乾いた笑いをこぼすしかなかった。
「…あんまり、真面目に考えなくてよくない?
あくまで、作品であって実際には……あ、そうね。結の場合に限り、こういう作品でも読んでイチャモンもつけたくなるわよね。
まあ、そういった作品自体は悪くないし面白いけど。」
なんて、女癖と素行の悪いイケメンをテーマにした漫画と小説(陽毬持参)を読み漁ってた結と陽毬は、主人公の気持ちに感情移入して
主人公の気持ちと一体化し、作品のクズイケメンに不服とばかりにブーイングをかましていた。
と、言いつつ、その手の小説や漫画は面白いから読んじゃうけど。だが、これを現実に考えると…というやつである。
何故、結と陽毬がクズをテーマにした漫画を読み漁って、大ブーイングをかましてるかというと
それには、大きな大きな理由があるのだ。
作品に罪はないが、こうして言いたい放題
悪態ついて憂さ晴らしでもしなければやってられない程
結の心は、弱りに弱りかなり参っていたのだ。
ちなみに結達は、お坊ちゃん、お嬢様や超有名人の御子息、ご令嬢ばかりが集まる某有名中学校一年生。ピチピチの12才である。今年で13才になる。
家は、日本のトップクラスの資産家の次女(末っ子)。
兄と姉がおり、自分と同じ血を引いてるのが不思議なくらいの美男、美女である、性格だって悪くはない。
18才以上年の離れた優しい兄姉である。
年が離れてるので、向こうはなかなかにご立派な職についていてあまり会う事もない。
だが、ここにきて大問題が。それは、自分の容姿と何をやっても駄目というあまりの不出来さにだ。
正真正銘、同じ血の通う兄姉だというのに…結の容姿は…どんなにスキンケアを頑張ってオシャレに力を入れても、中の下である。
しかも、スクワットを頑張っても下半身が痩せない…大根足。腹筋してるってのに、お腹に段がある。
身長が157cmに対して体重は52キロと健康面では別に太ってるわけではない。
のっぺり顔で、ちょっと丸い鼻はコンプレックスである。毎日、洗濯バサミで鼻を摘んでるのに一向に高くなる気配はない。解せぬ。
兄と姉は美形なんだ!自分だって、努力すれば兄と姉のようになれるはず。だって、血が繋がってるんだもん!
と、幼い頃の結は希望を持ち、お父さんとお母さんを説得して幼くしてジムに通う事から始め、スマートな足にはキックボクシングだと思い立ったら即習いに行き、姿勢を良くしたいと空手を始め…
思いつく限り様々な努力をしてみたが…美貌には程遠かった。
ただ、ここで分かった事。
自分は、体を動かす事が好きであり格闘技が大好きでその才能がありありだという事!!
そこから、結は格闘技にのめり込んでいった。気がつけば日本では敵無しである。凄いぞ、自分!!
男の幸せと女の幸せは、こうであるべきだという考えの両親にはまだ言えないが。
結は、将来自分の才能を活かして、格闘家か王様直属の軍人。…夢を高らかに持てば偉大なる帝王直属の軍人になるのが夢である。
それは、もっと自分の才能を磨き両親に認めてもらい、それから自分の将来やりたい事について話したいという結の意地からだ。
自分が一生懸命に頑張って成果を出せば、きっと両親も分かってくれる筈だと日々努力している。
だが、そんな結の強い決心など両親は知らず、可愛い我が子が格闘技でボロボロになる姿は見てられないと、結が格闘技をする事をあまり良く思っていない。
だから、アジア、世界進出は、絶対的なNGを出している。
世界となれば、どんな恐ろしい相手が来るのか…何より、これがキッカケで可愛い末っ子が格闘家になるとでも言いそうで怖い。
娘には、温かい幸せな家庭を持ってほしいと願う親心である。なので、どうあってもアジア・世界大会の大会へは出さなかった。
本当なら、日本でも大会なんて出てほしくないし、もっと言うなら女の子らしくなってほしいので格闘技自体辞めてほしい。
だけど、さすがに好きなものを取り上げる程、結の両親も鬼ではないので国内だけならばと妥協し泣く泣く結の趣味を許している。
両親は、結の兄や姉の様に、末っ子の結にも誰もが羨むような素敵な家庭を持って女としての幸せを知ってほしいと考えている。
幸せな家庭を持つ事こそ、女の幸せと疑ってないのだ。
…なのに、末っ子は容姿もイマイチな上に脳筋で全然モテない。
それどころか、結の容姿を見て鼻で笑う男や女をパーティーの席などで何度か見かけた事があり、親としてとても悲しい気持ちになった。
このままでは、将来結婚どころか…素敵な恋愛すら知らないまま筋肉ゴリラになってしまうのではと末っ子の将来を案じ慄いていた。
そこで、両親は思い立った。
この子は、残念ながらまったくもってモテない。
そもそも、かわいい我が子に対し言いづらくはあるが…容姿が…ちょっと…イマイチだし、性格は悪くないがガサツだから。
もちろん、自分達はそんなブs…ケフンケフン!末っ子でも愛嬌があってかわいいとは思ってる!だが、残念ながら世の中の世間一般の方々はそんな目では見てくれない。
ならば、我が財力と権力を大いに使って可愛い末っ子の為に『パーフェクトな婚約者』を選んでやろう!
そして、将来ウルトラハッピーな家庭を持ち幸せに暮らしてほしい。女としての幸せを諦めてほしくない!
なんて、モテない可哀想な末っ子の為に両親は年の近い、全てが完璧なイケメン御曹司を血眼になって探し厳選に厳選を重ね目星をつけ
向こうの家に、交渉に交渉を重ね
ついに、見つけ出したのだ!
結の両親も納得いく、結の理想の婚約者を!
いい人を見つけたと、こんな素晴らしい相手を見つけ出せた自分達を自画自賛していて結の両親はホックホクである。
それが、まさかそんな事態を招くとも知らずに。