美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
ルーフバルコニーへ連れて来られたウダツは、フジと向き合うように座らせ

「…大丈夫だったの?あれから、どうなったの?」

と、心配そうにウダツを見ていた。大地は二人の邪魔にならないように手すりに体を預けて様子を伺っている。

そこで、ウダツは凄くお世話になった二人だから…一人足りないが。隠す事なく全てを話した。

その内容に、フジは酷く憤慨し散々大樹と真白の悪口を言ってから

「…こんな、こんないい人にする仕打ちじゃないわ。どうして、ウダツさんにそんな酷い事ができるの?」

と、思わずウダツをギュッと抱きしめ泣いた。

抱きしめられた時、ウダツは慌てたものの自分の為に泣いてくれている女性を突き放す事なんてできず、フジを落ち着かせようと

「オイラは、大丈夫でヤスよ。」

“むしろ、自分が大樹と真白の気持ちに気づけなかったのが悪かった。”と、いう言葉は今の状況では適切ではないと感じ、その言葉は飲み込んだ。

フジは…いくら、ウダツさんが許しても私は許してなんかあげないわ!と、二人に対する怒りがフツフツと蜷局を巻くのだった。

「…それに、これで良かったと思ってるでヤス。」

「……え?」

「気付くのは遅すぎたでヤスが、大樹君と真白さんの本当の気持ちが分かって。そして、想い合う二人が結ばれたんでヤス。
心から良かったって思えるでヤスよ。」

と、少し寂し気に話すウダツに

「良くないわ!あなたは、どうなるのよ!?
あなたの幸せは?」

フジはウダツ自身の本当の気持ちを聞きたかった。綺麗事ばかりでないウダツの本心を。

「…二人が幸せなら、オイラはそれで幸せでヤス。」

なのに、そんな風に言って柔らかく笑うものだから

「ウダツさんが良くても私が絶対に嫌!
ウダツさんの気持ちを踏み躙ったアイツらは地獄に堕ちればいいと思ってるわ。」

そう、言ってから

「真白は本当に愚かな事をしたわ。こんなにいい男を捨てるなんて。見る目が無さすぎて笑えるわよ。いいわ。
アイツらに不幸にされた分、それ以上に…いえ!無限大にこの私が、ウダツさんを幸せにするわ!!」

なんて、とんでもないない事を言い出してきた。これは、まるで…

「……え?プロポーズ??」

フジとウダツの様子を見守っていた大地が思わず突っ込む。

すると、見る見るフジの顔は真っ赤かになり


「…そうよ!いい、ウダツさん覚悟なさい!
一目惚れではないけど、ウダツさんと過ごしたこの数時間で私は、ウダツさんを好きになったわ。だって、こんないい男、世界中どこを探したっていないもの。」

なんて、強烈な告白をしたフジに

「…ごめんでヤスが、今は好きな女性に振られたばかりで、フジさんの気持ちには応え……」

ウダツは、非常に申し訳無さそうにお断りの言葉を話してる最中に

「最後まで言わなくて結構よ。人の心ってそう変わるものじゃないもの。
だから、時間をちょうだい。一ヶ月!その間にウダツさんを惚れさせてみせるわ!」

と、ボロボロ泣きながら、ウダツに戦線布告してきた。

「…まずは、二人共友達からスタートだな。それで、いいだろ?ウダツ。」

大地が、そう言ってウダツを見た。

ウダツは雷にでも打たれたかのような衝撃を受け驚いていたが、大地に声をかけられて

「…はっ!…最初は友達からでも大丈夫でヤスか?」

そう、フジに声を掛けると

「本当は結婚したいけど、…まあ、仕方ないわ。友達から始めてあげても構わないわ!」

と、ツンとした態度で承諾したのだった。

陽毬が駆けつけたら、フジとウダツが結婚を前提としたお友達になる瞬間を目撃し速攻で、ショウにその内容をメールして報告した。

…ドキドキドキ!

お、面白い事になってきたでありますな!
グフフッ!!今夜はショウと徹夜でリモートです!楽しみであります!グフフッ!!


こうして波乱の幕は閉じたかに思われたが…

みんなで会場に戻ろうとルーフバルコニーから出て直ぐだった。

ここは会場とは違う別館。渡り廊下と繋がっているが、ここには灯りもあまりついてない事から、秘密ごとや何か隠れなければならない事情がある人くらいしか来ないであろう。今の自分達のように。

だが、なーんか変だ。

だって、別館の螺旋階段を降りて会場へと繋がる渡り廊下を行けば、会場のある建物へと行ける訳なのだが。

螺旋階段の途中に、2階、3階へと進める廊下がついている。その、2階あたりでバフォンバフォン!と、なんだか妙な音が聞こえてきた。

みんな、まだまだ色んな事が気になるお年頃。冒険心、怖いもの見たさに火がつく中学一年生達だ。

4人は音の正体が気になり、静かにそこに向かって歩いて行った。すると

2階のフロアに入ると、所々にある分厚いカーテン手前から二番目のカーテンに不自然な膨らみがあり、みんなで首を傾げながらソォ〜ッと近づいていくと

「…ハッ…あっ…!」

「……んっ…!」

なんだか、息遣いの荒い男女のうめき声の様な声が聞こえる。カーテンも妙な動きをしているし、クチュリ、ピチャピチャと水っぽい音もする。

ここで大地は、あ〜…これは。と、分かってしまったが、みんなを止めようとしても好奇心ばかりが先に立つ女性陣だけは止められなかった。

まさか、女子を放置してウダツと二人でここから去る訳にもいかないし。彼女達を説得したいが、そんな事したら自分達の存在がバレて都合が悪くなる。

…仕方ない、彼女達の気が住むまで付き合うかと諦め、探検家ごっこをする彼女達に苦笑いした。

その内

「…我慢できない、早く、早くきてぇぇ〜〜」

「…クソッ!この中、暑すぎるな。汗だくになってしまう!」

と、言う声と共に分厚いカーテンから衣服がはだけ、女性のおっぱいポロンの下半身丸出しな二人の男女の姿が現れた。

いきなりの事に、陽毬とフジは悲鳴をあげそうになったが、すんでのところで大地が二人の口を塞ぎシーッと合図した。

同時に

フロア内に、パンパンと肌と肌がぶつかり合う音と男女の喘ぐ声が聞こえて女性陣は興味津々にそれを見ていた。…ウダツは、両手で目を隠し真っ赤になっている。

それに気付いたフジは、心の中で

きゃーーーー!!

ウダツさん、初心過ぎるわ。

ああ、普段カッコいいのに、こんなに可愛いなんて…だ、抱かれたい…

と、悶え、来る時の為に男女の営みを勉強しておこうと、僅かばかりの光を頼りに研究していた。

そして、暗闇にもなれ段々と男女の姿がくっきりと見えてくると、そこに見知った男女がいたのだった。


…あら?

こんな所で、猿の様に盛ってる馬鹿二人は…

結のドクズ婚約者の九条 蓮と

………さっき、両思いが叶ったばかりの…真白だわ。

チラリとウダツを見ると、恥ずかしそうに両手で目を覆ってパニックになっている。

…良かった。

ウダツさんは、気がついてないみたいね。

そう思ったフジは、あわわとパニックになっているウダツを対面に抱き上げ、すぐさまその場を引き上げたのだった。

その間に聞こえてくる情事の音と会話。

「…本当に、これで最後なのかい?」

「…だって、本命と恋人になれたの。こんな、ごまかすような事しなくていいわ。それに彼、勘が鋭いし観察眼が凄いのよ?
だから、今日でさよならよ。今まで、ありがとう。良かったわよ?」

「…残念だけど、俺の体が恋しくなったらいつでも戻っておいで?真白嬢ならいつでも歓迎さ。」

「…ふふ、ありがとう。」

なんて、胸糞悪い会話を最後に彼らの声の届かない所まで、靴を脱いで忍みたいに足音を消しながら早足でその場を去った。

ドックン、ドックン…!!

それから、ゆっくりと靴を履くと蓮と真白のいる場所から離れ会場へと戻って行った。そろそろ、今日の社交界も終わりに近づいてきたからだ。

それぞれの家族が、家に帰る為自分の子供達を探し始める頃合いだ。

ただ、家族の元へ行く間

フジと陽毬、大地は胸糞悪い気持ちを抱えどうしようもなくなっていた。


真白のやつ…ウダツさんと恋人同士だった期間に堂々と他の男と浮気してたんだ!

それに、真白の様子から男慣れしてるように感じた。…蓮の他にも何人かセフレが存在しているに違いないと思った。…これは憶測でしかないけど。

どうしよう。このどうしようもないドス黒い気持ちのやり場は……!

誰かに、別館の二階で妙な物音が聞こえましたよ。とか、言ってやろうか!

なんて、やり場のない気持ちをフツフツ募らせていた。

そこに丁度大樹がいたので、悪い陽毬は仕返しとばかりに、大樹と通り過ぎざま

「…本当、似たもの同士の二人ですね。“埋められない気持ちを大勢のセフレで憂さ晴らしするところ”とか。」

と、小声で言って、さっさとその場から逃げた。


…やっちまった!

あまりに、アイツもコイツもムカつき過ぎて!あんな善人を騙す真白様も許せないでありますよ!

もう、自分の居場所がなくなりましたな。

でも、もう…どうでもいいでありますよ…


と、あんまり好きでない両親と大嫌いな兄妹のいる場所へと向かって行った。


陽毬と通りすぎざま陽毬の言った言葉。

…違うと思いたいが、今日洗いざらい打ち明けてきた陽毬が嘘をつくとは思えない。

だとしたら、真白は僕と同じく叶わない恋と諦め、行き場のない気持ちを晴らす為に大勢の男達と体を重ねていた。

それを、同じ様な事をしていた僕が咎める事はできない。

…だけど、違う…!

だって、真白…君は、ウダツと恋人だったじゃないか!

ウダツは、とてもとても君を大切にしていた。そんなウダツを裏切るなんて……そこは違うだろ!どうして、ウダツがいたのに…!

…ウダツ、おまえ…真白に裏切られてたみたいだぞ!?…ウダツ!…クソッ!!

…真白…どうして?

……いや、それでも僕に言えた義理はないのが悔しくて…悲しい。


今日はなんて日なんだ。今までしてきた酬いが一気にきたみたいな気分だ。まるで、天罰でも下り始めたかのような…

……ゾッ……

そんな大樹に

「あ〜…、マジで偶然。たまたま入手したヤツだけどさ。大樹にとって最低最悪なもんだけど必要?必要なら、携帯かパソコンにデータ送るけど?」

と、大樹の横に立ち小声で話す、大地。

…ドックン…!

「…よろしく頼むよ。」

「了解!」

そのまま、大地は何事もなかったかのように自分の家族の元へ行った。

そして帰る人達がちらほら出始めた頃、ようやく真白が姿を表した。

それを待っていたかの様に、フジは鬼の形相で真白に向かって行き仁王立ちした。そんなフジに、真白は驚き慄いている。

「……フジ様、どうかしましたか?」

そう、聞いてくる真白に

「大ありだわ!真白、どうしてそんなに息が乱れてるのかしら?」

フジの言葉に、真白はビクリと体が飛び跳ね少し青ざめる。

「…いつの間にか、帰る時間だと慌てて来たので淑女としてお恥ずかしい限りです。」

…フーン、そうくるわけ!

フジは、傲慢な態度で真白を見下ろしながら

「へえ?だから、髪も衣服も乱れてるの?…随分とお盛んね?何人そういった相手がいるの?まさか、もしかして両手では数えられないくらいなの?何十、何百っているのかしら?」

まるで汚物を見るかの様に、自分の顔を扇で隠し真白を指差した。真白は、サー…っと更に青ざめるとブルブルと体を震わせ

「…そんなにいる訳っ…!」

そう言いかけて、ハッとし周りを見渡すと

「…フジ様が、何をおっしゃっているのか身にございません。何をどう勘違いなさっているのか…それとも、ご自分に覚えがあるのでは?
フジ様にとって、私は目に余る存在なので、勝手な憶測だけで私を陥れようとでもしているのでしょうか?」

フジの存在感は圧倒的で、真白は今にも腰を抜かしそうな気持ちだったが、ここで負けたらフジの言ってる事が本当だと噂になりかねない。だから、ここは絶対に引いてはダメだと踏ん張った。

…ピキリ…!

雪のように真っ白なフジの額に青筋が浮かぶ。
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