美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
社交界当日、会場ではザワつきが止まらなかった。何故なら…


当然のように、大樹にエスコートされ登場した真白。会場は、

「お似合いの二人なのに恋人ではないなんてなぁ。大樹様には他に恋人がいるのだろう?真白嬢より、素晴らしい女性なのだろうか?」

「大樹様がお選びになるくらいなのだから、きっと真白嬢より魅力的な女性なのでしょう。」

「では、何故社交界にいらっしゃらないのか?」

「あら?ご存知ないの?最近、大樹様と真白嬢がお付き合いなさったそうよ?」

「あらあら、それはなんと喜ばしい事でしょう。」

などと、大樹と真白の話で持ちきりだった。
真白はとても喜びに満ちていて堂々としていたが、大樹は普段通りを装うが何処か複雑そうな雰囲気があった。

「…あら?でも、お二人のお友達であるウダツ令息が一緒じゃないなんて。いつも、二人の後ろを一歩下がった位置をキープして来ていたのに。」

「確かに、一緒じゃないのは珍しいですな。
ですが、さすがに恋人同士となった二人について歩くのは野暮だと感じ身を引いたのでしょう。ウダツ令息はとても優しい方ですからな。」


なんて声が聞こえた時、大樹はズキリと心が痛んだ。

何故なら、いつもの様にウダツと真白に社交界へ行く誘いのメールを入れた。

[今回も真白と三人で一緒に行こう。真白はいつも通り俺が迎えに行くから、ウダツはいつもの待ち合わせ場所でいい?
毎回、しつこいようだけど、ウダツの家を教えてもらえたら迎えに行くんだけど…。]

と、いつもの様にウダツと真白に送ったのだが

[いつも、ありがとう。私は大丈夫よ、大樹と恋人になって初めての社交界…緊張するけど、それよりも嬉しくてたまらない!凄く、楽しみ!]

真白は、いかに自分が嬉しくて楽しみにしてるか自分の気持ちを全面に出したメールを返してくれた。

…だが、そのメールも大樹は複雑な気持ちで読んでいる。

それから、ウダツにしては珍しく大樹がメールを送ってからしばらくしてから返事が返ってきた。

あまりの返事の遅さに嫌な予感がしつつ優しいウダツに限って、こちらを強く咎める話はしてこないはずだ。どんなに嫌な事をされても優しい笑顔で許してくれるようなやつだ。

不安がる必要なんてないだろう。と、大樹は気を取り直してメールを開き、絶望し目の前が真っ暗になったのを思い出していた。


そして、少しすると会場中が割れんばかりの歓声に包まれ、思わずみんなが注目している場所を見て心臓が飛び出るほど驚いてしまった。

隣にいる真白も持っていた扇をバサリと落としてしまった事にさえ気付かないくらい驚き固まっている。

「…ど、どなただ!?あの天女の様に美しい令嬢は…なんと、美しくも品があり…なんと表現したら良いものか…」

「…ホォォ〜…何たる美貌…かの美の女神も嫉妬するくらいの美しさだ。仕草の一つ一つから品の良さを感じる。」

「初めて見る御令嬢だ。今日はこの御令嬢を一眼拝見できただけで、来たかいがあるというもの!まさに、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とは彼女の為にあるようなものだ!」


と、絶賛の嵐を受けている女性は、全てのコーディネートがとてもシンプルで飾り気がないのに、最先端の流行りを取り入れ一つ一つが素晴らしい素材やデザインであり
真っ赤なマーメイドラインドレスは嫌味なく、彼女の良さを存分に引き立てていた。


そして、そんな彼女の羨ましいエスコート役は…なんと、ウダツであった。

それには、会場中が驚きの声で「エェェーーーーーッッッ!!!?う、嘘だろぉ〜〜〜ッッッ!!!?」なんて、いっぱいになっていた。

そうだろ、そうだろ!もっと、びっくりして腰抜かしてもいいんだぞ!と、ドヤ顔して会場に入る結はいつも通りお兄さんにエスコート役をしてもらっている。

「…す、凄いな。結から聞いてはいたけどな。…ここまで、大変身してしまうなんて女性って凄いなぁ。あの女神様のように美しい女性が、まさかあのフジ嬢だとは気付く人は居ないんじゃないか?」

結の兄も、フジのあまりの美しさに見惚れ、エスコートする足が止まってしまっている。

フジが大絶賛の嵐で大注目されてるのを見て、真白が悔しそうに「…今日は、私と大樹が主役の日なはずなのに…誰っ!?あの御令嬢は…邪魔よ!」と、小声で呟き、大注目のまるで天女か美の女神を思わせるような見た事もないような美女を睨み付けていた。

そんな真白の様子を見ていて、ウダツとのメールのやり取りを思い出し…更に複雑な気持ちに苛まれる大樹。

その内、ある意味で会場がザワザワとし始めた。

今度は何だ?と、そこを見ると

145cmくらいのややぽっちゃりの令嬢を、160cmくらいのスタイル抜群の令息がエスコート。その一歩後ろには若き騎士が二人を護る様にいる。

ちっちゃい二人で微笑ましいとか、そういう優しい気持ちでザワついているわけではない。

まずは、二人の装いだ。
女の子のプリンセスドレスは、白からピンクのグラデーションの生地でふわふわ可愛らしい。が、見る人が見れば分かる。
世界でも手に入りづらい生地に、最新技術の施された可愛らしく散りばめられた立体的な花の模様。
ドレスに合わせた、ティアラやアクセサリーなども目が引く。

しかし、ドレスや雰囲気を損なってはいないもののドレスに合った可愛らしい仮面をかぶっているので、どこの御令嬢か分からないし…
仮面舞踏会でもあるまいし、仮面をつけてくるなんて少々非常識なんじゃないかとヒソヒソ言われていた。

彼女をエスコートしている令息も、二人で打ち合わせでもしたのか彼女とペアだとわかる様な王族服を着ており彼女に合わせ、こちらは青い色でビシッと決めており彼女と同じ花をいくつか散りばめているがとても似合っており、彼が着ているからなのかとても魅力的な王族服であった。

こちらはシンプルな仮面で顔を隠しており、ブルーの目と金髪のストレートの髪しか見れない事が残念である。

後ろについている騎士は、階級こそ不明だが王族直属の騎士の正装をしている。

なので正体は分からないが、とても身分の高い方々な事だけは分かった。

…おそらく、お忍びで社交界の様子を見に来た超VIPなのだろう。下手に関わらない方が身のためとみんな、何事もないかの様にいつも通り社交の場を楽しんでいた。

「…うわぁぁ〜〜〜!!お姫様や王子様がいっぱいいるね。…はひゃぁ〜〜!お城も広いし、どこもかしこもキラキラだぁ。…うわぁ〜、夢の世界だぁ!」

と、感動するショウだが本人は知らない。
自分のコーディネートが、この会場にいる御令嬢やご婦人方全てのドレスやアクセサリー類など全ての金額を足しても買える値段ではない事を。

知るのは、その価値を分かる者と桔梗と風雷のみ。ファッションに関心のあるフジは、ショウと桔梗のコーディネートを見た瞬間に、腰を抜かしかけた。
フジの異変に即座に気がついたウダツによって腰を支えてもらえるというラッキーもあったが、ここにきてフジはショウに対して大きな疑問を感じる事となった。

…ショウ…あなた、どれだけお金持ちなの!?

なんて、フジが驚いている間にも

桔梗にエスコートされ、ショウは無作法にもキョロキョロ周りを見渡し楽しそうにキャーキャー騒いでいる。

もちろん、そんな姿に顔を顰める人達も多かったが、正体不明の世界一と言っても過言でないだろう大富豪のお嬢様を、悪く言って何かお咎めがあればと考え、当たり障りないのが一番だとショウのマナーの悪さを見て見ぬふりをした。
もちろん、ショウ達と目が合えば気分を損ねないようニッコリ笑顔で何かお世辞の一つでも言ってその場を凌いでいる。


桔梗のエスコートで、景色や色んな人達の様子が見える位置に誘導され事前に用意されていたフカフカの豪華な椅子に座らせられた。

「…ふはぁ!ドレスとかアクセサリーって重いんだね。靴もヒールが高くて歩くづらいし、それなのにみんな立ちっぱなしで凄いなぁ!お姫様達って大変な思いしてたんだね。」

ショウは椅子に座るなり、ドレスやアクセサリーの重さやヒールのついた靴の歩く辛さ。全体的に動きづらいという事に驚きを隠せずいた。

それでも、ヒールといっても他の御令嬢のヒールの高さが平均8cmくらいに対しショウは3cmしかないのだがヒール部分が少し高いってだけでバランスを取るのが難しく歩きづらいし、すぐに疲れてしまう。

隣で桔梗がショウの手と腰を支えてくれていたからとても楽に歩けた。

他の令嬢達は、強者だと10cmから12cmのピンヒールを履いてる。よく、あんな針みたいな棒の支えで立ってられるなんて、ましてや歩けるなんて凄いと思う。…踏まれたら足に穴が空きそうだなんて妙な想像をしてしまってちょっと身震いしてしまうショウだった。

ショウの後ろには風雷が騎士のポーズで立ち、桔梗はショウの横に立ち、ショウと一緒に選んだ美味しそうなピンチョスやデザートを楽しそうに談話しながら食べさせ合いっこしている。

たまに、仮面をかぶっていて顔も分からない後ろに控える若そうな騎士にも無理矢理食べさせている。
ただの護衛とは何か違う…まだまだ若いという事もあり見習中で、主人達とはまだまだ友達感覚なのだろうと周りの人達は少し微笑ましい感じに受け取っていた。
なにせ、主人の方からちょっかいを出しているのだから。


この奇妙な仮面三人組を見て

「……どうして、仮面なんかつけてるの?
変わった人達ね。だけど、身に付けている物は全てにおいてとても素敵だわ。」

と、真白は少しおねだり気味にチラッと大樹を見た。

「…とてもじゃないけど、うちでは到底手の届かない上級品だよ。あんなの買ってしまったら、家が倒産するどころかこの国の十分の一が買えてしまうよ。」

そう言う大樹の顔は、とても強張っていてその仮面三人組をジッと見ている。

国の十分の一が買えてしまうほどの値段?そんな馬鹿みたいな金額のコーディネートをしているあの少女は一体誰なのだろうか?

「それにしても、マナーも知らない御令嬢で見ていて恥ずかしくなるわ。誰か、注意してあげないのかしら?
相手のご令息や騎士は、大樹に引けを取らないほど品も作法もどれを取っても美しい仕草だわ。マナーもしっかりしている。まるで、完璧を絵に描いたよう。
…だからこそ、あのふっくらした御令嬢のマナーの悪さが目立って仕方ないのよ。」

真白は、そんな事にも気づかないなんて可哀想な令嬢だと哀れんで見ていた。

「…しかも、なに?あのふっくらした御令嬢だけ特別に椅子が用意してあるなんて。どこか体に不自由のある御令嬢なのかしら?」

なんて、心配しつつ

「そういえば、どうして今日はウダツは私達と一緒に来なかったの?…ずっと、仲のいい幼なじみだと思ってたのに残念だわ。
しかも、私達よりも誰かも分からない御令嬢のエスコートするなんて…可哀想…」

と、いつの間にかウダツの話に変わり、ウダツを可哀想だという真白。

「……どうして、可哀想だと思うのかな?」

大樹は、不思議そうなに真白の美しい横顔を見た。

「…だって、普通はウダツのように残念な容姿のご令息にエスコートされたくないわ。だって、周りの視線がきになるもの。だから、見目のいいご令息にエスコートされるという事は、とても光栄で自慢なの。エスコートする側だってそうでしょ?」

真白はそう言って、愛しげな表情を浮かべ大樹を見てきた。

…ドクン…

…確かに、そうだが…

それを言葉に出されると現実味が出てズキリと胸が痛む。

大樹は、痛む胸を抑え真白の話の続きを聞く。

「きっと、あの御令嬢は自分の美貌を引き立たせる為だけにウダツを利用したのよ。
ウダツの隣に立てば、少しでも自分に自信がある人なら誰だって自分が引き立つもの。都合よく利用されてる事にも気づかない鈍感なウダツが痛々しくて見ていられないわ。」

…ドクン…

そう言われ、ウダツと謎の美女を見れば…どうも真白の言っている事は信憑性に欠ける。

何故なら、どこからどう見たって仲睦まじいカップルだ。とても初々しくて甘酸っぱくなる様な素敵なカップルにしか見えない。

もし、真白の言う通りならば、謎の美女はウダツを邪険にしさっさと置いて何処かへ行ってしまっているだろう。

そんな事もせず、ウダツに蕩ける様な熱い視線を送りつつずっと寄り添い幸せそうにしている。

そして、真白の言っている事はウダツに対して、真白がどんな風に思い側に置いていたのか分かる発言だ。

…そう考えれば、自分達といた時のウダツがどんなに惨めで情けない、悔しい気持ちでいたのか想像するだけでも辛い。

それを、今の今までウダツはずっと忍耐強く我慢してきたのだ。


「…いつもの様に、私達の幼なじみとして“私達の後ろ”を歩いてくれば良かったのよ。
そしたら、そんな惨めな思いをしなくて済んだのに。…あの御令嬢は悪魔のような方だわ。」

真白の話の内容に、大樹は今までは感じなかった引っ掛かりを感じた。それに、真白が言えば言うほど大ブーメランで自分に返ってきている事にも気付いてないのだろうか?

「…ねえ、真白。そういえば、君とウダツが付き合ってた頃も、たくさんの社交界に来ていたけど。いつも、エスコート役は僕で、ウダツは俺達の後ろを歩いていたよね?
どうして、恋人同士だった君達なのにウダツにエスコートを頼まなかったの?」

と、聞いた。すると、真白は驚いた表情で大樹を見ると

「私とウダツは恋人なんかじゃないわ。“そういう事になったでしょ?”ウダツの優しさを無駄にしないで?もう、その話は無しよ?」

真白は強く釘を刺した後

「でも、それは当たり前よ?私がウダツにエスコート…フフッ!あり得ないわ。ウダツが恥をかくだけよ。私はウダツの為を思って、ウダツからのエスコートを断っていたのよ?」

なんて、クスクス笑った。

…ドクン…

…え?

ウダツは、真白にエスコートの申し出をしていたのか?

それを“ウダツが恥をかくだけ”だと、真白が断っていたなんて…知らなかった…

真白から、ウダツと恋人同士だと周りに知られたらウダツが虐められてしまう可能性があるから内緒にしてほしいの。
だから、大樹にエスコートをお願いしたいわ。

と、頼まれ複雑な気持ちでエスコートをしてきた。

何で、真白には恋人がいるのに俺が真白のエスコートをしなければならないんだ。

僕と真白が本物の恋人同士だったら良かったのに。…カモフラージュの役なんて…

悔しい思いとやるせない気持ちでいっぱいだったが、今思うと

恋人の真白が、他の男にエスコートされる姿をすぐ後ろから見ていたウダツは、どんなに苦しく悔しい思いをしてきた事か。

考えただけで、自分ならとてもじゃないが耐えられない。

それを、ウダツは……


…ごめん、ウダツ…

今さら、謝っても遅いけど…


「…実はね、僕はウダツに絶交されたんだ。だから、今日ウダツは一緒に来なかった。」

そう言って、少し俯く大樹に酷く驚いた表情の真白が

「…ど、どうして、急に、そんな…。今まで、私達とても仲が良かったのに。」

と、悲しそうな顔で大樹に聞いてきた。

「……僕達は、ずっとずっとウダツに酷い事ばかりをしてきた。その事に、ようやく僕は気付く事ができた。だから、その願いを聞き入れた。…聞き入れるしかなかったんだ。」

大樹の話に、至極不思議そうに真白は首を傾げると

「何を言ってるの?分からないわ。私も大樹も、ウダツに優しくしてあげてたわ。輪から外れない様に、たまに話を振ってあげたりして。」

そういう真白に、大樹はうなづいて

「…まずは、そこからおかしいんだよ。他にも、社交界のエスコートで、恋人が他の男にエスコートされる姿を見たらどんな気持ちになるか考えた事ある?
いつも、何事も俺優先で俺とばかり話をしていて、ウダツはそのオマケ状態。何か都合のいい時にばかりウダツを使う。
ウダツに大きな負担かけて可哀想な事ばかりしても“ウダツはとても優しいから許してくれる”で、済ませる。」

「…さっきから、一体何を言ってるの?」

「…僕達は、ウダツの優しさや辛抱強さに甘えに甘えてきた。それが当たり前になって、ウダツの気持ちを考える事すら無くなった。
もっと言うなら、対等で同じ人間という認識が消えた。
自分達は対等でなくなり優劣がつくようになった。…同じ人間で大切な幼なじみだったはずなのに。いつの間にか、僕達はウダツに対して酷い差別行為をしていた。それも、無意識にだ。」

下を俯き歯を食いしばる大樹は、悔しそうに握り拳を作り自分自身への怒りで小刻みに震えていた。

そんな大樹の拳に真白はソッと触れ

「…そんなに自分を責める事なんてないわ。きっと、ウダツなら分かってくれるわ。
それに仕方ないわ。ウダツが“あんな風に生まれてしまったから”。生まれ持った容姿や才能は、どうしようもないもの。
そういう星の元に生まれたのよ、ウダツは。受け入れるしかないわ。」

ウダツを思いやり悲しげな声で、大樹を慰めてくる真白に大樹は大きく目を見開いた。

「……な、何を言ってるんだ?」

「…ほら、見て。あそこにいる御令嬢、ご令息。」

と、閉じた扇で、バレないように小さく特定の令嬢や令息を指差していく真白。

指差された令嬢や令息達は、どの人もパッとしなくて中には壁の花になっている人も何人かいる。

「ああいう、見た目、才能、家柄に恵まれない残念な人達は、優秀な人達に媚を売ったり、自分の価値をよく分かってる人は身の程を弁えて壁の花になるしかないの。
ウダツは、私達のおかげで、あんな無様な真似をしなくて済むのよ?大樹の優しさのおかげよ?感謝されて当たり前なの。
なのに、調子に乗って絶交をするだなんて恩知らずもいいところだわ。」

真白は、大樹に対して絶交宣言したウダツを罵倒した。

「…そういえば、あの時の社交界の帰りに、何故か大地(ダイヤ)様から“あなた方は、あくまで昔、幼なじみだっただけの人達だ。ウダツに関わるな。これはウダツの言葉と思え”そんな感じの事を言われたわ。
…くだらな過ぎて、さっきまで忘れていたけど。」

…………ッッッ!!?

あの温和な大地が、直接真白にそんな事を言うなんてよっぽどの事だ。

それに、あの時、大地がたまたま目撃してしまった真白の本性だ、欲しかったら携帯に送ると言われ送ってもらったデータ。

真白を信じたい気持ちと、長年の真白への気持ちが成就し浮かれて周りが見えてなかった自分。…何より真実を知るのが怖くて、まだ見れていない。

「…それよりも、大樹って手が早いのね。その日のうちに、私の“はじめて”奪われちゃった。…ふふ!」

と、恥ずかしそうに俯き、潤んだ目で上目遣いしてくる真白に大樹はキュンとした。

そう、真白と恋人になれたのが嬉しくて、ウダツとはキス一つしてない真っさらな体と言われ大樹は有頂天になってしまったのだ。

その日、大樹の部屋で二人は繋がった。

それから初心な真白の反応に興奮して、毎日のように放課後デートする度にも高級ホテルで体を繋げていた。

…そんなラブラブで幸せだったはずの自分なのに、どこか引っ掛かりを感じていた。

愛の営みを終え、冷静になって浮かんでくるのはウダツの顔…ウダツは、真白の体を知らないんだよね?

…嬉しいけど、複雑だな…


…そして…


何故か、本当に何故か陽毬と過ごしてきた日々を思い出し切なくなる。…苦しい…とても。

どうしてか、分からないけど、真白と手を繋ぐ度、キスをする度、抱き締める度、体を合わせる度に、罪悪感ばかりが襲ってきて最終的に虚しい気持ちに襲われる。

自分は、長年の恋心が叶い幸せの絶頂なはずなのに。

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