美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
真白が、恥じらいながら恋人らしい話をしている間にも仮面三人組にも動きがあった様だ。

なんと、気づかないうちに仮面三人組の所に、ウダツと謎の美女、大地までもが集まってきていて。その中に、財前家の令嬢と……陽毬までもがいて楽しそうに談笑していた。

本当に打ち解けた仲の様で、とても楽しそうだ。

…それにしても、あの仮面三人組。完璧な変装で声まで変える“魔具”まで使っていようが、僕は分かる。

あれは、ショウと桔梗。そして、こんなレベルの低い社交の場に来る筈のないとんでもない人物までいる。だが、彼の職業柄、事情があれば来るしかないであろう、風雷。

何をしに来たかは、何となくだけど察する事ができる。おそらくは、“滅多にでないショウの我が儘”。ショウのお父上にでも、おねだりしたのだろう。ショウは、あまり我が儘を言わないせいか、結構無茶振りな我が儘でさえ叶えてしまう親バカだから。

と、困った顔をしつつ笑う大樹は、

ショウがあんなに楽しそうにしてるなんてとてもいい友達ができたんだね。

良かった。

特に、桔梗がショウを独占してないのがいい証拠だ。

ショウを微笑ましく見ている大樹は、今すぐにでも自分もその輪に入りたいと思うも、ある時からショウに避けられるようになり距離を感じている事と…
あそこにウダツがいる為、どの面を下げてあの輪の中に入ればいいんだと…ショウに会いたくても会えない、もどかしい気持ちに悩まされた。

そんな大樹の気持ちが届いたのだろう。

ショウは大樹の方を見て、あっかんべーってしてきた。年はそんなに変わらないはずなのに、いつまで経っても幼い子供だ。

とっても可愛い。

そんなショウに大樹は、苦笑いして機嫌を直して?と、小さく首を傾げて見せた。

だが、腕組みをしプイッとソッポをむかれてしまった。そんなショウの姿に、思わずクスッと大樹は吹き出してしまった。

それを見て、真白は

「大樹が、そんな風に笑うのはじめて見たわ。どうしたの?」

と、聞いてきた。

「…いや、ごめん。ちょっとね。」

だが、そう言って何かは教えてくれなかった。

「…でも、あの御令嬢どうして、“あんな人達”の所にいるのかしら?
どう見てもどう考えても、あの御令嬢は“あちら側”じゃなくて“こちら側”なのに。
あんな人達と一緒にいたら、ご自分の価値を下げるだけなのに気にしないのかしら?きちんと自分の価値を把握して行動した方がいいと思うわ。」

大樹が教えてくれないから、ちょっとムスッとしながらも淑女らしく大樹の気持ちに寄り添い別の話題に話を変えた。

「…ねえ、真白。さっきから、“あちら側”、“こちら側”、“自分の価値”と、しきりに言ってるけど、ちょっと意味がよく分からないよ?
それに、真白は僕のどこを好きになってくれたの?」

大樹は笑みを浮かべ首を傾げながら、真白に聞いた。

「…え?今さら、そんな事聞くなんて…恥ずかしい…。」

真白は、カァ〜…と顔を赤らめ両頬に手を添え恥ずかしそうにしながら

「大樹は誰もが注目する有名人。王家でありながら、誰にでも平等に接してくれる優しい人。
眉目秀麗、文武両道。それに加えて、若くして世界のトップに通用する社交ダンス。
もう、言う事がないくらい完璧な紳士よ。そんな、大樹が…すき…。」

と、つらつらと大樹の好きな所を言ってきた真白。それを片方の耳で聞きながら、もう片方にはイヤホン…真白から見えない反対側の手には携帯。

そして、真白の話を聞きながら大地から送ってもらったデータの映像と音声を器用に見て聞いていた。

…大地から、うっすら聞いていたけど

人の事は言えないけど、これは…凄いな。

まさか、両思いになって恋人になったその日に、さっそく浮気なんてね。

しかも、僕には“処女”アピールしてたけど、あまりに小慣れすぎている。

どれだけの男達と関係を持っているのか。

僕と初めてした時は、処女のフリが上手かったな。…って、言っても処女を相手にした事がなかったから、僕もまんまと騙されたって訳か。

…間抜けすぎるな、僕。

僕が初めてと疑わず、とても丁寧に優しく気遣っていた自分が馬鹿らしくなるくらい九条 蓮と激しく…下品な真似までしてるな。…相当、色々と仕込まれてるね。

誰に、何を仕込まれたかは分からないけど。将来は、性的に男性を喜ばせる職業にでも就くのかな?

しかも、ウダツの事は…真白の評価を上げる為だけに優しくしてるフリをした見せかけだった。本音は……ハァ……。

そんな女に引っ掛かるなんて、僕もウダツも女を見る目が無さすぎるね。

今までは、自分も真白の言ってる事はそうだと思って疑わなかった。

だけど、今回ウダツに絶交宣言されて、ウダツの気持ちや考えを聞いているうちに、自分の今までの行いや考え方について考えさせられた。

衝撃だったし、ショックだった。

そんな自分を振り返っているうちに、陽毬へ対し行ってきた事への罪悪感が膨れる一方でどうしようもない気持ちに悩まされた。

だけど、自分には清楚で清らかな真白がいる。それだけを心の支えにしていた。
だけど、満たされない。いつも、何かに引っ掛かりを感じ、虚しくて…寂しい…胸にポッカリと穴が空いたままだった。

…真白がいるのに…それだけでいいじゃないかと思っても、それらを拭いきれなかった。


…ウダツの言葉を聞いて

それから、色んな事を考えて考えて…自分の気持ちに整理をつけるには、まだ時間はかかりそうだけど。

ただ、思った事がある。ウダツは、誰よりも心がイケメンで紳士だった。君は、尊敬するに値するいい男だよ。

僕は、ウダツのような男になりたいと心から思ったんだ。


そして、今。

真白の愚行が写ってるデータを見ながら、真白の話を聞いて決心した。

…何より、こんな本性を知ってしまったら、いくら容姿が美しく外面が良くても…汚物に思えてしょうがない。


「そっか。真白は、僕のスペックが好きなんだね。僕も君のスペックと外面の良さが好きだったよ。だけど、中身は好きになれない。
だから、君とはこれ以上恋人ではいられない。」

「……え?」

「真白を好きじゃなくなった。冷静に君の話を聞いていたら、僕とは根本的に考え方が違い過ぎて一気に冷めちゃったよ。だから、今、ここで別れよう。
それに、君と恋人になった事はなかった事にしよう。僕にとっての汚点だよ。」

何が起きているのか分かってなくてポカーンとしている真白を置いて、大樹は颯爽とどこかへ行ってしまった。

遠くで大樹が誰かと話しをしている声がする。


「聞きましたよ?真白嬢と恋人なんですよね?前からお似合いだと思っていたんですよ。」

誰かに声を掛けられたのだろう。それに、大樹が答える。

「どこから、そんなデマが流れるのかな?
残念だけど、真白とは幼馴染なだけで特別な関係ではないよ。これからも好きになる事はないし、彼女に対して恋愛感情は持てないよ。」

「…え!?そうだったんですか?
今、会場ではその話で持ちきりですよ!」

「…参ったなぁ。他に好きな女性がいるんだけど誤解されたくないよ。」

と、大樹は結構大きな声で話していたので、近くにいた人達がそれを耳をダンボにして聞き、面白い話題だと直ぐに別の人達に話をしに行く。

そして、会場中

“大樹と真白が恋人同士だというのはデマで、二人はただの幼馴染に過ぎず大樹には別の恋人がいる。”

“ただの幼馴染なのに一緒にいると最愛の恋人に勘違いされそうだから、本当は真白とは一緒にいたくない。”

と、いう噂にすり替わっていた。

噂が広まるのはあっといういう間だな。

それに、この短時間で内容も結構変わってるし。

…まあ、自分に害はないし、確かにこれ以上真白とは一緒に居たくなかったからちょうどいいかな?

けど、“百年の恋も冷める”って、本当にあるんだなぁ。マイナスがつくほどに冷めるなんて考えもできなかったよ。

あんなのを長年想い続けて少しだけど恋人になってしまったって思ったら、自分自身が気持ち悪くて吐き気がしそうだ。

本当、女見る目がないなぁ。あんな汚物好きになった事実、それこそなかった事にしたいよ。

と、まだまだクズからの脱出にはちょっと時間がかかりそうな大樹だった。

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