美形なら、どんなクズカスでも許されるの?〜いや、本当ムリだから!調子乗んなって話だよ!!〜
ーーーーー
「なんだか、こうしてると“エリー”と結婚式をしてるみたいな気持ちになるよ。そのドレスもティアラも全部とても似合ってるよ。
この会場中…ううん、世界中の誰よりも可愛い!」
と、桔梗はショウの偽名である“エリー”の名で呼んだ。偽名に慣れないショウの為に社交界に参加すると決まった時から家で偽名で呼び合う練習をしていた二人だ。
「本当だね。“ヨシノ”のお嫁さんになっちゃった気分。…それにしても、“ヨシノ”は何を着ても凄く似合っちゃうからビックリしちゃう。すっごく、カッコよくてドキドキする。」
練習のかいもあり、ショウも桔梗の偽名である“ヨシノ”とすんなり呼んでいる。
結やフジ、陽毬には、一般人が参加してバレたらヤバそうだから偽名を使う事を携帯で連絡しておいた。ついでに、顔バレしないように仮面を付ける事と声を変える魔具を使う事も。
魔具なんて、上流階級でも滅多に手に入らないし入手するには様々な審査もあるという。
そんな魔具を持っているなんて、ショウの親は一体何をしている人なんだろう?と、結達は首を傾げるのだった。
イチャつきは、いつもの事だが…
「…俺のお嫁さん…」
仮面をつけてても分かる、おめかししたショウを蕩けきった顔で見ている桔梗の様子が何かおかしい。
ショウの前にひざまづいて、ショウの片方の足を持ち上げるとレースと花が可愛い靴の先にキスをして、ショウの手を取ると手の甲にキス…
それから、直ぐに立ち上がると椅子の膝当てに手を置きグイッと体をショウに近づけて唇にキスをしてきた。
仮面だし、唇をくっ付ける真似事だけど
…あ、いつもの桔梗の暴走だ。
そこにいるウダツと大地以外のみんなはそう思った。
いつも落ち着きがあって大人な桔梗だが、ショウへの気持ちが昂りある一定のゲージを超えると暴走する困った男でもあった。
今、自分達の結婚式気分になり、とても興奮しているのだろう。
いつも桔梗の暴走を見ている面々は、どうやってショウを可愛がろう、堪らない、我慢出来ないという気持ちが伝わってきて何とも言えない気持ちになる。
別に、ヤバい事もしてないし公衆の場なので桔梗なりに、かなり我慢して抑えている方なのだろう。だが、まだ中学に入ったばかりの思春期達には刺激が強すぎる。
…だが、今回は何だかいつもと同じようで何かが違う気がする。
椅子の隙間に桔梗は膝を乗せると
「…凄く綺麗だよ。…ショウ、なんて魅力的なんだ…俺…我慢できないよ。
…ちょっと抜け出そ?何かあった時のために、この屋敷の構造は把握してる。そこで、ちょうどいい場所を見つけたんだ。…ね?お願い…俺、もう…」
ショウの片方の頬に優しく手を添えると、ショウの耳元で囁くようにそんなお願いをして急かしている。
つまり、これは…!
瞬時に理解した風雷は
「駄目だ!せっかくショウが楽しみにして来たのに、ショウの体を動けなくして台無しにするつもりか?」
即座に桔梗を叱咤した。
「…そういう破廉恥な事はテレパシーで話してくれる?品がないって変な目で見られるよ?」
桔梗はそう言うが
「…いい性格してる!“学生でいる期間は、魔道は滅多な事では使うな。魔道を使えない一般人と同じように生活しろ。”と、口を酸っぱくして忠告されている筈だ。」
風雷はそれよりも、しっかり約束事は守れと怒ってきた。
「…ハア〜。“アラガナ”は、堅物過ぎるんだよ。もっと頭を柔軟にした方がいいと思うし、俺の大事な所が爆発しそう。」
と、いう桔梗の発言で、
うわぁ〜〜〜っっっ!!!?
やっぱり、そういう事!?
会場に来たばかりで、何でいきなり盛っちゃってるの?この桔梗って猛獣は!?
桔梗の言っている意図を理解できた、みんなは頭を抱えてしまった。ちなみに、結とウダツは残念ながらよく分かってない。
たまに、ドレスの中に入って舐めるくらいならバレないかな?試してみようかな?なんて、ぶつくさドS発言まで聞こえる始末。
どうやったら自分の発情をショウに受け入れてもらえるか、瞬時に色んなシチュエーションで考えどれが最善かこの短い間に試行錯誤し考えているようだ。
なんて諦めの悪い男なんだ。
桔梗の雰囲気が悶々とエロいフェロモンを出しまくっていて、それに当てられた人達も多くいるようで…周りの雰囲気も何だかアダルティーな雰囲気に侵されつつある。
もちろん、メンバーの中にもフジは隣にいるウダツに、ムラムラ…悶々としていて体が火照って火照って仕方なかった。
心の中では、ウダツに“我慢できないでヤス!”と、襲われあーんな事やそーんな事をされる妄想をするが…陽毬の規制された少女漫画でしか男女の営みの知識はなく…そこら辺はとてもザックリだが、とにかくだ!
隣には大好きな人がいる時に、こんなエロいフェロモン駄々漏れの雰囲気を流されたら…そんな気持ちになってもおかしくない。
フジは、もう何でもいいからウダツとイチャイチャ肌のお付き合いをしたいとムラムラムラムラ…と、どうしようもない気持ちに襲われていた。
…ウダツさぁ〜〜ん!
私の体おかしいの…ウダツさんにたくさん触れてどうにかしてほしいぃぃ〜〜!
そこに、フジのフェロモンも加わり、結達のいる周辺は何とも言いがたい媚薬のお香でも焚いたかのようなムラムラが充満している。
そんな時だった。
ショウは桔梗の耳に両手を添えると、何やらみんなに聞こえないようにコソコソ話を始めた。
すると、桔梗は目を大きく見開くと次の瞬間には初心な反応をしてきて真っ赤かになっている。そして、何だか…何より嬉しそうな顔をして喜びを隠しきれず口元が感動なのか(?)でフルフル震えている。
そこで、ようやくショウはヒソヒソ話をやめて
「ね?」
と、照れ臭そうではあるけど、ふんわり笑って首を傾げて見せた。
「…俺のショウが…可愛すぎる…」
桔梗はポロリと本音を漏らした時、あまりに小さい声だったがうっかりショウの名前を出してしまっていて風雷と大地はめちゃくちゃに焦って、聞こえてないだろうかと周りを見渡し警戒した。
どうやら、周りに聞こえた人は居ないらしい。それにホッと胸を撫で下ろす風雷と大地だった。
そして、ショウが何を言って桔梗を説得し納得させたかは謎だが。
その後桔梗は、ショウの耳元で何かを囁きショウは林檎のように真っ赤になった。
そんなショウの頬っぺたに桔梗がリップ音だけする可愛いキスをして、ようやくショウから離れたかと思うと
「…ショウがあまりに可愛過ぎるから我慢ができなくなっちゃった。ごめんね?でも、もう大丈夫。」
申し訳なさそうにショウに謝罪をした。
こうして落ち着きを取り戻した桔梗ではあるが、これに関しての桔梗の“大丈夫”は全く信用できない。
そう思う面々であった。
そこに、パチパチと手を叩きながら
「さすが、僕達の“妹”だ。その猛獣は、ショウの言う事しか聞かないからね。だけど、耳にタコだろうけど、ショウの言葉一つでその猛獣は大魔王と化してしまう。気をつけて取り扱ってね?」
ショウを称賛しつつ釘をさす大樹の姿があった。
どうして、こんな所に大樹が来るのかとみんな警戒していると
「…え!?頑張って変装したのに、どうして私だって分かったの?桔…あ、ヨシノだって、カラコン入れる時、どうしても両目瞑っちゃってなかなかカラコン入れる事できなくて大変な思いまでして変装したのに!」
ショウは、驚いた様子で大樹を見てきた。
「…世界で一番大切な“妹”を見間違う訳がないよ。そして、ショウを怒らせてしまった事。
とても反省してる。キッカケは何であれ、まさかバレちゃうとは思ってもなかったけど…。
そういう問題でもないよね。僕の心の弱さが招いた事だから。」
大樹は、王族最高の礼儀のポーズを取り
「この度は、我が君におかれまして酷く不快な思いをさせてしまいました。我が君の思う通りの罰はいくらでも受ける所存であります。
…ですが、私の我儘が通るならば…我が君の側から外さないでほしく存じます。我が君から外されたら…私は…っっっ!!!」
と、ショウに向かい謝罪と自分を見離さないでほしいと懇願する言葉が出てきた。
「……う〜ん……。」
何かを悩んでる風のショウの言葉を待っている間、大樹は生きた心地がしなかった。
顔面は蒼白で、どんな言葉が出てくるのか恐怖で震えが止まらない。
「大樹が私の側にいる事は当たり前の事でしょ?大地だって、そう。
でも、いけない事したら怒るのは当たり前だよ?本当に悪い事してたんだから。
バレないからとか、隠れてしてるからとか関係ないよ。駄目な事は駄目!」
と、今までほんわかした姿しか見た事のなかったショウが、プンプン怒っている。
それに対して、それを親身に受け取り反省している大樹の姿に結達は違和感しかない。
「…はい。もう、ご存知かと思いますが。
今回、色々な事がありまして様々に考えさせられ、いかに自分が愚かで傲慢な人間だったかを思い知らされました。…後悔しかありませんし、恥ずかしい限りです。」
ショウに対し懺悔する大樹に
「大樹君は陽毬ちゃんだけじゃなくて、色んな人達を苦しめたんだよ?自分が悪い事して苦しめてきた人達みんな漏れなく心から謝って許してもらってね。それができたら、今回の件は許してあげる。」
と、恐ろしい条件を言ってきた。
そもそも、ターゲットにしていじめてきた人間なんて、いちいち覚えてないし相当な数の人達に悪い遊びをしてきた。
それを全て探し出し、許してもらえという。はたして、酷いイジメをした人物を誰が許せるだろうか?無茶振りが過ぎる。
だけど、自分はそれだけの事をしたし、そんな生温い事で許されるものではない事も重々承知だ。…だが、許してもらうなんて…
と、大樹が途方に暮れていると
「ショウ、さすがにそれは無理があるかな?」
桔梗がショウに少し口を出してきた。
「……むり?どうして?」
「うん。ショウの言ってる事は正しいと思うし、そんな風にできたらいいなとは思うよ?
だけど、人の心は複雑なんだ。
イジメて遊んでる方は忘れちゃうくらい大した事がなくても、イジメられた方は違う。」
それには、大樹は思うところがあったようで複雑そうな表情を浮かべている。
「イジメられた人達は、イジメられた事を事細かに覚えている。だけど、時間が経つ程に内容は薄れていくだろうが相手に対しての恨みや憎悪だけは決して忘れない。
まして、心の傷の具合や自分の置かれてる環境によって膨らむ一方の人達もいるくらいだ。」
これには、陽毬が思うところがあり悔しそうに顔を歪ませ泣きそうになっている。
それを見て、大樹は酷く胸が苦しくなった。
「イジメられた方は、ずっと心に傷が残ったまま…うん、凄く分かるよ。」
そう言ったショウを優しく包み込む桔梗。
そして、大樹と大地はグシャリと顔を顰める。
「だからね、ショウ。こういうのは、どうかな?虐めた人達を探し出して誠心誠意謝る。
だけど、大樹を許せる人なんてまずいないだろう。だから、大樹はこれから自分の人生が終わるその時まで、その罪と向き合いながら生きていく。
これほど、重い処分はなかなか無いと思うよ?」
そう、言ってくる桔梗に
「…うん、そうだね。自分のしちゃった事は元に戻せないから、虐められた人達の気持ちを考えて向き合って?大樹が、その人達にできる事はそれしかないから。」
と、ショウは言った。
「我が君のお言葉、重く受け止めその様に努めます。」
大樹が、そう言ったところでパンッと大地に肩を叩かれ
「可愛い妹からの許しも出た事だし、真白嬢との事はどうなってんだ?恋人になったんじゃなかったのか?今、噂で凄い話になってるぞ?」
と、大地に言われ、ちょうど自分と真白の噂をしているグループの声が聞こえてきた。
「…あらあら!大樹様には他に好きな女性がいるというのに、真白嬢は幼なじみという関係性をひけらかせて二人の恋路の邪魔をしてるんですって!
だから、真白嬢の幼なじみマウントに対して、大樹様は大変手を焼いて困っているそうよ?」
「真白嬢はあんなに、お淑やかで清純そうなのに意地悪い事をなさるのね。」
「…あと、これは一部で有名な話ですけど、蓮令息と真白嬢は深い仲らしいわよ?」
「…え?私が聞いたのは、烈火令息と真白嬢が中庭の草陰で激しく燃え上がっていたと聞きましたわ。」
「見間違いかと思ったが、その話を聞く限りじゃ俺の見間違いじゃなかったかもしれない。実は、俺は外の壁の隙間で陽光令息と真白嬢がヤッてるの見たぞ。」
「いえいえ!ワシは、蓮令息がミミ嬢と何処かの小部屋に隠れて絡み合っていたと聞きましたぞ。」
「自分は、彩雲嬢が複数人とまぐわってるのを何度も見た事あるよ。」
なんて、出てくるわ出てくる。他の令息や令嬢の名前も出てくるが圧倒的に名前が出てくるのが、彩雲、ミミ、烈火、蓮、陽光、真白の名前だった。
彩雲とミミ、烈火、陽光は有名だったが、蓮と真白の名前も大きく上がるなんてなと大樹は空笑いしか出てこなかった。
「…なあ、ウダツ。俺達って、本当に女見る目がなさ過ぎるね。」
と、大樹は苦笑いして、ウダツを見ると
「そこは、返す言葉もないでヤス。でも、真白さんのおかげでとてもいい勉強になったでヤスよ。そこは、大きく感謝してるでヤス。」
そんな事を言ってのけたウダツに、隣にいる女神の様な美貌の女性はウダツにうっとりと呆けて周りからたくさんのハートが飛び出していた。
隅におけないなと大樹は思いつつ、真っ直ぐに前を向いてウダツはもう歩き始めているのだろう姿を眩しく見ていた。
「…ウダツ、こんな事言うのも厚かましいけど。僕は、まだまだ自分の事を見直さないといけない。我が君や……うん、ドクズって言われたくないからね。ドクズを脱却できたら、こんなどうしようもない僕だけど友達になってくれないか?」
と、自信なさげに大樹はウダツに頭を下げてきた。
「もちろんでヤス!それに、自分を見つめ直して変わろうとする大樹君はドクズなんかじゃないでヤスよ。だから、今から友達になってもらえると嬉しいでヤス。」
ウダツは、ニッコリと手を差し伸べると
「…………っっっ!!!?あんな酷い扱いばかりしてきたのに…ウダツは優し過ぎるよ。
ありがとう!これからは、友達としてよろしくね。」
大樹は涙ぐみながら、ウダツとがっしりと握手を交わした。
それから、大樹は陽毬の方を向いて
「……君に言う事は、こんな大勢の前ではとても言える事ではない。だから、僕の我が儘だけど人の少ない中庭に一緒に来てほしい。」
そう言って頭を下げてきた。地位の全然違う超格上に頭下げられたら嫌でもうなづくしかない。下っ端には拒否権など存在しない。
だから、陽毬は渋々といった感じに大樹の後を着いて行った。最初、大樹はエスコートしようと手を差し伸べたが、陽毬は渾身の首振りで断った。大樹は困った顔をしながらも
「…そう…だよね。」
苦く笑い、陽毬が追いつけるだけのスピードで歩いて行った。陽毬はその10歩か15歩の距離をキープしながら、大樹とは全然関係ありませんよぉ〜といった感じに、寄り道するフリをしたりして大樹を見失わないように他人のフリをして着いて行くのだった。
「なんだか、こうしてると“エリー”と結婚式をしてるみたいな気持ちになるよ。そのドレスもティアラも全部とても似合ってるよ。
この会場中…ううん、世界中の誰よりも可愛い!」
と、桔梗はショウの偽名である“エリー”の名で呼んだ。偽名に慣れないショウの為に社交界に参加すると決まった時から家で偽名で呼び合う練習をしていた二人だ。
「本当だね。“ヨシノ”のお嫁さんになっちゃった気分。…それにしても、“ヨシノ”は何を着ても凄く似合っちゃうからビックリしちゃう。すっごく、カッコよくてドキドキする。」
練習のかいもあり、ショウも桔梗の偽名である“ヨシノ”とすんなり呼んでいる。
結やフジ、陽毬には、一般人が参加してバレたらヤバそうだから偽名を使う事を携帯で連絡しておいた。ついでに、顔バレしないように仮面を付ける事と声を変える魔具を使う事も。
魔具なんて、上流階級でも滅多に手に入らないし入手するには様々な審査もあるという。
そんな魔具を持っているなんて、ショウの親は一体何をしている人なんだろう?と、結達は首を傾げるのだった。
イチャつきは、いつもの事だが…
「…俺のお嫁さん…」
仮面をつけてても分かる、おめかししたショウを蕩けきった顔で見ている桔梗の様子が何かおかしい。
ショウの前にひざまづいて、ショウの片方の足を持ち上げるとレースと花が可愛い靴の先にキスをして、ショウの手を取ると手の甲にキス…
それから、直ぐに立ち上がると椅子の膝当てに手を置きグイッと体をショウに近づけて唇にキスをしてきた。
仮面だし、唇をくっ付ける真似事だけど
…あ、いつもの桔梗の暴走だ。
そこにいるウダツと大地以外のみんなはそう思った。
いつも落ち着きがあって大人な桔梗だが、ショウへの気持ちが昂りある一定のゲージを超えると暴走する困った男でもあった。
今、自分達の結婚式気分になり、とても興奮しているのだろう。
いつも桔梗の暴走を見ている面々は、どうやってショウを可愛がろう、堪らない、我慢出来ないという気持ちが伝わってきて何とも言えない気持ちになる。
別に、ヤバい事もしてないし公衆の場なので桔梗なりに、かなり我慢して抑えている方なのだろう。だが、まだ中学に入ったばかりの思春期達には刺激が強すぎる。
…だが、今回は何だかいつもと同じようで何かが違う気がする。
椅子の隙間に桔梗は膝を乗せると
「…凄く綺麗だよ。…ショウ、なんて魅力的なんだ…俺…我慢できないよ。
…ちょっと抜け出そ?何かあった時のために、この屋敷の構造は把握してる。そこで、ちょうどいい場所を見つけたんだ。…ね?お願い…俺、もう…」
ショウの片方の頬に優しく手を添えると、ショウの耳元で囁くようにそんなお願いをして急かしている。
つまり、これは…!
瞬時に理解した風雷は
「駄目だ!せっかくショウが楽しみにして来たのに、ショウの体を動けなくして台無しにするつもりか?」
即座に桔梗を叱咤した。
「…そういう破廉恥な事はテレパシーで話してくれる?品がないって変な目で見られるよ?」
桔梗はそう言うが
「…いい性格してる!“学生でいる期間は、魔道は滅多な事では使うな。魔道を使えない一般人と同じように生活しろ。”と、口を酸っぱくして忠告されている筈だ。」
風雷はそれよりも、しっかり約束事は守れと怒ってきた。
「…ハア〜。“アラガナ”は、堅物過ぎるんだよ。もっと頭を柔軟にした方がいいと思うし、俺の大事な所が爆発しそう。」
と、いう桔梗の発言で、
うわぁ〜〜〜っっっ!!!?
やっぱり、そういう事!?
会場に来たばかりで、何でいきなり盛っちゃってるの?この桔梗って猛獣は!?
桔梗の言っている意図を理解できた、みんなは頭を抱えてしまった。ちなみに、結とウダツは残念ながらよく分かってない。
たまに、ドレスの中に入って舐めるくらいならバレないかな?試してみようかな?なんて、ぶつくさドS発言まで聞こえる始末。
どうやったら自分の発情をショウに受け入れてもらえるか、瞬時に色んなシチュエーションで考えどれが最善かこの短い間に試行錯誤し考えているようだ。
なんて諦めの悪い男なんだ。
桔梗の雰囲気が悶々とエロいフェロモンを出しまくっていて、それに当てられた人達も多くいるようで…周りの雰囲気も何だかアダルティーな雰囲気に侵されつつある。
もちろん、メンバーの中にもフジは隣にいるウダツに、ムラムラ…悶々としていて体が火照って火照って仕方なかった。
心の中では、ウダツに“我慢できないでヤス!”と、襲われあーんな事やそーんな事をされる妄想をするが…陽毬の規制された少女漫画でしか男女の営みの知識はなく…そこら辺はとてもザックリだが、とにかくだ!
隣には大好きな人がいる時に、こんなエロいフェロモン駄々漏れの雰囲気を流されたら…そんな気持ちになってもおかしくない。
フジは、もう何でもいいからウダツとイチャイチャ肌のお付き合いをしたいとムラムラムラムラ…と、どうしようもない気持ちに襲われていた。
…ウダツさぁ〜〜ん!
私の体おかしいの…ウダツさんにたくさん触れてどうにかしてほしいぃぃ〜〜!
そこに、フジのフェロモンも加わり、結達のいる周辺は何とも言いがたい媚薬のお香でも焚いたかのようなムラムラが充満している。
そんな時だった。
ショウは桔梗の耳に両手を添えると、何やらみんなに聞こえないようにコソコソ話を始めた。
すると、桔梗は目を大きく見開くと次の瞬間には初心な反応をしてきて真っ赤かになっている。そして、何だか…何より嬉しそうな顔をして喜びを隠しきれず口元が感動なのか(?)でフルフル震えている。
そこで、ようやくショウはヒソヒソ話をやめて
「ね?」
と、照れ臭そうではあるけど、ふんわり笑って首を傾げて見せた。
「…俺のショウが…可愛すぎる…」
桔梗はポロリと本音を漏らした時、あまりに小さい声だったがうっかりショウの名前を出してしまっていて風雷と大地はめちゃくちゃに焦って、聞こえてないだろうかと周りを見渡し警戒した。
どうやら、周りに聞こえた人は居ないらしい。それにホッと胸を撫で下ろす風雷と大地だった。
そして、ショウが何を言って桔梗を説得し納得させたかは謎だが。
その後桔梗は、ショウの耳元で何かを囁きショウは林檎のように真っ赤になった。
そんなショウの頬っぺたに桔梗がリップ音だけする可愛いキスをして、ようやくショウから離れたかと思うと
「…ショウがあまりに可愛過ぎるから我慢ができなくなっちゃった。ごめんね?でも、もう大丈夫。」
申し訳なさそうにショウに謝罪をした。
こうして落ち着きを取り戻した桔梗ではあるが、これに関しての桔梗の“大丈夫”は全く信用できない。
そう思う面々であった。
そこに、パチパチと手を叩きながら
「さすが、僕達の“妹”だ。その猛獣は、ショウの言う事しか聞かないからね。だけど、耳にタコだろうけど、ショウの言葉一つでその猛獣は大魔王と化してしまう。気をつけて取り扱ってね?」
ショウを称賛しつつ釘をさす大樹の姿があった。
どうして、こんな所に大樹が来るのかとみんな警戒していると
「…え!?頑張って変装したのに、どうして私だって分かったの?桔…あ、ヨシノだって、カラコン入れる時、どうしても両目瞑っちゃってなかなかカラコン入れる事できなくて大変な思いまでして変装したのに!」
ショウは、驚いた様子で大樹を見てきた。
「…世界で一番大切な“妹”を見間違う訳がないよ。そして、ショウを怒らせてしまった事。
とても反省してる。キッカケは何であれ、まさかバレちゃうとは思ってもなかったけど…。
そういう問題でもないよね。僕の心の弱さが招いた事だから。」
大樹は、王族最高の礼儀のポーズを取り
「この度は、我が君におかれまして酷く不快な思いをさせてしまいました。我が君の思う通りの罰はいくらでも受ける所存であります。
…ですが、私の我儘が通るならば…我が君の側から外さないでほしく存じます。我が君から外されたら…私は…っっっ!!!」
と、ショウに向かい謝罪と自分を見離さないでほしいと懇願する言葉が出てきた。
「……う〜ん……。」
何かを悩んでる風のショウの言葉を待っている間、大樹は生きた心地がしなかった。
顔面は蒼白で、どんな言葉が出てくるのか恐怖で震えが止まらない。
「大樹が私の側にいる事は当たり前の事でしょ?大地だって、そう。
でも、いけない事したら怒るのは当たり前だよ?本当に悪い事してたんだから。
バレないからとか、隠れてしてるからとか関係ないよ。駄目な事は駄目!」
と、今までほんわかした姿しか見た事のなかったショウが、プンプン怒っている。
それに対して、それを親身に受け取り反省している大樹の姿に結達は違和感しかない。
「…はい。もう、ご存知かと思いますが。
今回、色々な事がありまして様々に考えさせられ、いかに自分が愚かで傲慢な人間だったかを思い知らされました。…後悔しかありませんし、恥ずかしい限りです。」
ショウに対し懺悔する大樹に
「大樹君は陽毬ちゃんだけじゃなくて、色んな人達を苦しめたんだよ?自分が悪い事して苦しめてきた人達みんな漏れなく心から謝って許してもらってね。それができたら、今回の件は許してあげる。」
と、恐ろしい条件を言ってきた。
そもそも、ターゲットにしていじめてきた人間なんて、いちいち覚えてないし相当な数の人達に悪い遊びをしてきた。
それを全て探し出し、許してもらえという。はたして、酷いイジメをした人物を誰が許せるだろうか?無茶振りが過ぎる。
だけど、自分はそれだけの事をしたし、そんな生温い事で許されるものではない事も重々承知だ。…だが、許してもらうなんて…
と、大樹が途方に暮れていると
「ショウ、さすがにそれは無理があるかな?」
桔梗がショウに少し口を出してきた。
「……むり?どうして?」
「うん。ショウの言ってる事は正しいと思うし、そんな風にできたらいいなとは思うよ?
だけど、人の心は複雑なんだ。
イジメて遊んでる方は忘れちゃうくらい大した事がなくても、イジメられた方は違う。」
それには、大樹は思うところがあったようで複雑そうな表情を浮かべている。
「イジメられた人達は、イジメられた事を事細かに覚えている。だけど、時間が経つ程に内容は薄れていくだろうが相手に対しての恨みや憎悪だけは決して忘れない。
まして、心の傷の具合や自分の置かれてる環境によって膨らむ一方の人達もいるくらいだ。」
これには、陽毬が思うところがあり悔しそうに顔を歪ませ泣きそうになっている。
それを見て、大樹は酷く胸が苦しくなった。
「イジメられた方は、ずっと心に傷が残ったまま…うん、凄く分かるよ。」
そう言ったショウを優しく包み込む桔梗。
そして、大樹と大地はグシャリと顔を顰める。
「だからね、ショウ。こういうのは、どうかな?虐めた人達を探し出して誠心誠意謝る。
だけど、大樹を許せる人なんてまずいないだろう。だから、大樹はこれから自分の人生が終わるその時まで、その罪と向き合いながら生きていく。
これほど、重い処分はなかなか無いと思うよ?」
そう、言ってくる桔梗に
「…うん、そうだね。自分のしちゃった事は元に戻せないから、虐められた人達の気持ちを考えて向き合って?大樹が、その人達にできる事はそれしかないから。」
と、ショウは言った。
「我が君のお言葉、重く受け止めその様に努めます。」
大樹が、そう言ったところでパンッと大地に肩を叩かれ
「可愛い妹からの許しも出た事だし、真白嬢との事はどうなってんだ?恋人になったんじゃなかったのか?今、噂で凄い話になってるぞ?」
と、大地に言われ、ちょうど自分と真白の噂をしているグループの声が聞こえてきた。
「…あらあら!大樹様には他に好きな女性がいるというのに、真白嬢は幼なじみという関係性をひけらかせて二人の恋路の邪魔をしてるんですって!
だから、真白嬢の幼なじみマウントに対して、大樹様は大変手を焼いて困っているそうよ?」
「真白嬢はあんなに、お淑やかで清純そうなのに意地悪い事をなさるのね。」
「…あと、これは一部で有名な話ですけど、蓮令息と真白嬢は深い仲らしいわよ?」
「…え?私が聞いたのは、烈火令息と真白嬢が中庭の草陰で激しく燃え上がっていたと聞きましたわ。」
「見間違いかと思ったが、その話を聞く限りじゃ俺の見間違いじゃなかったかもしれない。実は、俺は外の壁の隙間で陽光令息と真白嬢がヤッてるの見たぞ。」
「いえいえ!ワシは、蓮令息がミミ嬢と何処かの小部屋に隠れて絡み合っていたと聞きましたぞ。」
「自分は、彩雲嬢が複数人とまぐわってるのを何度も見た事あるよ。」
なんて、出てくるわ出てくる。他の令息や令嬢の名前も出てくるが圧倒的に名前が出てくるのが、彩雲、ミミ、烈火、蓮、陽光、真白の名前だった。
彩雲とミミ、烈火、陽光は有名だったが、蓮と真白の名前も大きく上がるなんてなと大樹は空笑いしか出てこなかった。
「…なあ、ウダツ。俺達って、本当に女見る目がなさ過ぎるね。」
と、大樹は苦笑いして、ウダツを見ると
「そこは、返す言葉もないでヤス。でも、真白さんのおかげでとてもいい勉強になったでヤスよ。そこは、大きく感謝してるでヤス。」
そんな事を言ってのけたウダツに、隣にいる女神の様な美貌の女性はウダツにうっとりと呆けて周りからたくさんのハートが飛び出していた。
隅におけないなと大樹は思いつつ、真っ直ぐに前を向いてウダツはもう歩き始めているのだろう姿を眩しく見ていた。
「…ウダツ、こんな事言うのも厚かましいけど。僕は、まだまだ自分の事を見直さないといけない。我が君や……うん、ドクズって言われたくないからね。ドクズを脱却できたら、こんなどうしようもない僕だけど友達になってくれないか?」
と、自信なさげに大樹はウダツに頭を下げてきた。
「もちろんでヤス!それに、自分を見つめ直して変わろうとする大樹君はドクズなんかじゃないでヤスよ。だから、今から友達になってもらえると嬉しいでヤス。」
ウダツは、ニッコリと手を差し伸べると
「…………っっっ!!!?あんな酷い扱いばかりしてきたのに…ウダツは優し過ぎるよ。
ありがとう!これからは、友達としてよろしくね。」
大樹は涙ぐみながら、ウダツとがっしりと握手を交わした。
それから、大樹は陽毬の方を向いて
「……君に言う事は、こんな大勢の前ではとても言える事ではない。だから、僕の我が儘だけど人の少ない中庭に一緒に来てほしい。」
そう言って頭を下げてきた。地位の全然違う超格上に頭下げられたら嫌でもうなづくしかない。下っ端には拒否権など存在しない。
だから、陽毬は渋々といった感じに大樹の後を着いて行った。最初、大樹はエスコートしようと手を差し伸べたが、陽毬は渾身の首振りで断った。大樹は困った顔をしながらも
「…そう…だよね。」
苦く笑い、陽毬が追いつけるだけのスピードで歩いて行った。陽毬はその10歩か15歩の距離をキープしながら、大樹とは全然関係ありませんよぉ〜といった感じに、寄り道するフリをしたりして大樹を見失わないように他人のフリをして着いて行くのだった。